第21話 スターの涙
「騎士様、ここ!!!」
木の上から騎士様に声をかける。
「俺の名前はアドルフだ!!!」
だって、騎士様のほうがかっこいいんだもん!!!
「スター、どうやって降りるつもりなんだ??」
シリウスは呆れたように私を見ている。
「それならね」
勢いよくシリウスめがけて降りる。
「ちょ、あぶな!!!」
シリウスはあいかわらず反射神経がいいな。
「もう一回!!!」
「「もうするな!!!」」
シリウスと騎士様の顔が怖い。
「スター!!!!!!!!!!」
マルコの声がすごく聞こえるなぁ。
「な、なんだ??」
騎士様は少し後ずさる。
多分、あのことだろう。
でもなぁ。
「よし、鬼ごっこ!!」
逃げたもんが勝ち!!!
「スター!?」
シリウス、後で説教聞くから今のうちに逃がさせて!!
「はぁっ。はぁっ」
すっごく楽しい!!
久しぶりに走る!!
「スターちゃん??」
この声は。
「お医者様!!」
「どこ行くの??」
「鬼ごっこ!!」
走りながら答えればお医者様は笑っていた。
「気をつけるんだぞー!!」
お医者様は、お父さんみたい。
ひたすら、黒髪の男性がいた。
「こんにちは!!」
服を掴んで言えば男性は少しだけ目を見開いた。
「やぁ、こんにちは」
ふわりと微笑むその人は優しい紳士ってところ。
「君はどこかの貴族の使用人かい?」
「そうだよ!!スターっていうの!!」
頭にそっと手をのせられる。
それから、私とおじさんは話すようになった。
「それでね、シリウスはずーっとそばにいてくれるんだ」
「スターちゃんはシリウス君が好きなんだね」
最近はシリウスの話ばかりしてる。
「スターちゃんの主は優しいかい?」
いつもこの質問。
「すっごく優しいよ!!でも、さみしそうなの」
だって、家族がそばにいないから。
「おじさんは、さみしくないの?」
「おじさんは、さみしいとか言えないかな」
変なおじさん。
「マルコ様はね、私には絶対弱音をいわないの」
それが寂しいの。
「おじさんは、いつまで逃げるの」
おじさんの目は金色。
「どういうこと、だい」
強張る表情。
「マルコ様を傷つけるのなら私は公爵だろうと何だろうと許さない」
私は立ち上がり、笑顔を浮かべる。
「最後まで家族として守ってね、
「スター!!」
シリウスの迎えの声。
「今、行く!!」
少しだけ歩いておじさんの方を振り向く。
「スター、あの人は」
「息子を鬼に捧げてるの」
シリウスと手を繋いでマルコの所へ帰る。
「スター、母上が呼んでる」
緊張したマルコの声。
「はーい!」
私はこの後のことを少しだけ考えた。
呼ばれた場所へ行くとおじさんがいた。
「およびですか、お姫様!おじさんも昨日ぶり!!」
私の言葉で誰もが息を止める。
「スター、あなたなんていいました」
メイド長怖いなぁ。
「だって、そうでしょ。公爵であろう人が愛人を作って子供を作り。それだけでは飽き足らず、血のつながりのある息子を放置。そのせいでマルコ様は誘拐されました。まぁ、そのおかげで私はマルコ様に出会えました」
マルコside
スターは公爵である父に話をしながら泣いていた。
「家族がいなくなってからは遅いのに。私だってすごく後悔してるのに。おじさんもそうなっていいの」
初めて聞くスターの家族の話。
「私は、親を盗賊に殺されました。盗賊から人買いに売られて奴隷になった。そこでシリウスに出会わなかったら今の私はいない。マルコ様に出会えたからたくさんの人に出会えた。魔法の力も使えることを知った」
泣きながらも一生懸命に話す姿に。
気づいたら僕はスターの手を握ってた。
反対の手をシリウスが握っていて。
僕とシリウスの肩に手を置くアドルフ。
アドルフの手もスターの手も暖かい。
「私はもう二度とやり直せない。それなのに。おじさんはまだ間に合うのに。どうして逃げるの。向き合わないくせにマルコをここに置いとくの。お母さんと一緒にいさせてあげてよ。酷いじゃん。こんなのひどすぎるよ!!」
スターの涙とともに風が吹く。
「「「スターーー!!!」」」
3人の声が重なるがスターには届かない。
どうすればいい??
「スターちゃん、ごめんね」
優しくて慈愛に満ちた声。
小さい頃何度も聞いた声。
スターの魔力暴走がゆっくりと落ち着く。
「うわぁぁん!!!」
スターが年相応に泣いている。
「スター、泣きすぎだろ!!」
「アドルフ、黙れ」
「ひでぇ!!」
アドルフのあの話し方は嘘のようだ。
「スターの涙は!!」
シリウス、何を見て・・・。
「これは、、星の雫」
星の雫って何。
「嘘だろ」
嫌な予感がする。
「アドルフ、星の雫って何?」
シリウスは顔色が悪い。
「それは」
聞きたくない。
「選ばれた一族の末裔の特徴だ。涙が星のように輝く雫の形になることから『星の雫』と言われてる」
父さん、何を言ってるの。
「スターの、本当の名前は何」
シリウス、何言ってるの。
スターはスターでしょ。
「遠い先祖からの贈り物。伝説の国、日本の漢字という文字で歌に星。
あぁ。
「私が歌うと夜空は輝くの。星が歌いだす。奇跡がおこる」
スターの涙は、、、
「私の涙は、不幸と喜びをもたらす」
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