第4話 これからは
夜中の間ずっと、私を背負ったまま歩き続けた。
時折、休んだりしながら。
「ほら、少しでもいいから水を飲め。きつくなったら、言うんだぞ?」
彼は笑いながら私に水を渡す。
「これから、何処に行くの?」
私が聞いても答えは返ってこなかった。
代わりに彼が言ったのは意外な一言だった。
「名前考えないとな。そうだなぁ」
楽しそうに吐く息は白くて。
少し考えるように黙って優しい声で呟いた。
「なぁ、お前の名前は、。スター、スター・ブルー。どうだ、いい名前だろ?」
「私の名前??」
「そう、結構いい名前だろ」
思わず笑顔になる。名前を忘れた私にもう一度名前ができた。
「それじゃあ、あなたは?」
「俺?……シリウス・アルナイル」
「シリウス?」
満足そうに笑う彼。
ううん、シリウス。
「ちなみにスターの名前はブルースターていう花からとった。俺は二種類の星から。とりあえず、名前は決まったから休めそうな場所探すか」
照れてるのか少し早口にシリウスは言った。
それから2人でなるべく暖かくて人に見つからなそうな場所を探す。
2人、くっついて大きなコートに身を包みその日は静かに眠った。
こんなに心休まる静かさはなかった。
その夜、暖かい場所で笑うシリウスがいた。
『これからは一緒だよ。ずっとずっと』
そういって、手を伸ばされその手を握ればたくさんの花弁が宙に舞った。
すごくきれいな世界の中でシリウスは幸せそうに笑っていた。
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