第2話 大丈夫

彼は私の言葉を。

今よりもっと前に言った言葉を叶えようとしてくれている。

『君は悪者に立ち向かうヒーローだね!!』

きっと、あの言葉に縛られている。

私のせいで痛い目にあってまで。

「なにいってんだ?」

不機嫌そうな声。顔を上げると彼は言った。

「お前がいたから、俺は強くいれるんだ。だから、そんな顔するな。俺がいるから、大丈夫」

意味がわからない。

彼が笑えば、自然と涙がひっこむ。

「なに、それ」

私は気づいてなかったんだ。

彼と関わると自分自身がどうなるのか。


「いやぁぁああああああ!!」

悲痛な声が地下室に響く。

その声の主は、私。

反抗する奴隷を助けた生意気な奴隷として。

私は体全身にむちを打たれる。

強さも勢いも叫びだしたいほど。

痛いだけじゃない。

感覚さえなくなっていく。

遠くなる記憶の中。

誰かの叫び声が聞こえて。

ぼんやりする視界のなか、彼が立っていた。

手元にはきらりと光る刃があって。

「しっかりしろ!!」

崩れ落ちる体を受け止められ。

かすれる声で言った。

「怖い」

「大丈夫だ。もう、大丈夫」

呪文のように呟かれ、私は彼の腕の中で泣いた。

声を押し殺して。

ただ、怖いとだけ言う私は気づいてなかった。

彼が、なぜここにいるのかを。

彼が何をしたのかを。

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