第6話お客様第一号⑥
「それじゃ早速、実戦といこうか」
「へ? 実戦?」
ハルトがその場に膝をつき、地面に右手を当てた。
「大地よ、我に力を! 出でよゴーレム!」
ハルトが詠唱すると、地面に大きな魔法陣が浮かび上がり、そこから2体のゴーレムが出現した。
「ちょ、ちょっとぉ。いきなりなんなのよ!」
「戦え、マリア!」
「ハルトのバカっ」
ハルトから大剣を受け取ったマリアが、下着姿のままゴーレムめがけて走り出す。
(あんな大きなゴーレム、しかも2体なんて私が倒せるの? 余計なこと考えてる余裕ない。戦いに集中しなきゃ!)
全長3メートルを超える土人形がマリアに向かって拳を振り下ろす。
「ヤァァァ!」
迫りくるゴーレムの拳をマリアが大剣で薙ぎ払った。剣の風圧で土埃が舞い上がり、同時にゴーレムの腕が粉々に砕け散る。
2体目の攻撃を素早くかわしたマリアが大剣を構えて体勢を整える。
(私、ちゃんと動けてる。胸も全然気にならないし、すごく体が軽い。敵は2体。私から仕掛けて崩さないと)
再びマリアが走り出す。2体のゴーレムも並んで向かってくる。
「ハァァァ!」
マリアが右側のゴーレムの懐に飛び込みながら斬撃を浴びせる。そのままもう1体の背後を取り、マリアは大きく跳躍した。大剣を振り上げゴーレムの頭上から真っ二つに両断した。2体のゴーレムはボロボロと崩れ落ち、元の土と化した。
「はぁ、はぁ……」
「お見事!」
息を切らすマリアに、ハルトが拍手を贈る。
「ハルトの作ってくれた戦闘用ブラのおかげね。自分でもびっくりしてる」
「いや、俺は大したことはしてないよ。マリアが本来の力を発揮できるように手助けしただけさ。これが君の実力だ」
「本当にありがとう。私、自信ついたかも。でも、このブラって高いんでしょ?」
マリアが恐る恐る尋ねる。
「大丈夫、サービスするよ。マリアが買おうとしてた防具と同じ値段でどうかな?」
「えっ、ホントにいいの? ハルトは、なんでそんなに親切にしてくれるの? 初めて来店したばかりの客に、しかもビギナー冒険者なのに」
「初めてのお客さんだからこそさ。マリアが俺の記念すべき、お客様第一号なんだ。うちの商品が気に入ったら、常連になってくれよ」
ハルトがニッコリ微笑む。
「ええ、もちろんよ。絶対また来るわ」
マリアも笑顔で答え、身に着けている若葉色のブラにそっと手を当てた――。
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