#14

ライマーを先頭に、役人たちが庁舎からいっせいに出てきた。

馬が歩みをとめると、馭者が飛び降りて、すかさず馬車のドアを開けた。

役人たちが走り寄り、一列に並んだ。


「若君。ご足労でございます」


馬車から降りてきたのは、エルンストだった。


「ライマー。あの大時計、五分進んでいないか?」


「はっ? さようで?」


ライマーがギョッとした顔で、庁舎を振り返った。


「そんなはずは……」


エルンストはポケットから時計を取り出して、見比べた。


「やはりズレている。壊れているのか?」


「すぐに直させます」


「ふむ……しかし、屋敷よりも島の時間が五分早く進んでいることになるな」


「そっ……そういうことに……なりますかな……?」


「誰も気がつかなかったのか?」


真面目なライマーが困惑した表情を浮かべているのを見て、エルンストは苦笑した。


「まぁいい。先に仕事を片付けてしまおう」


「かしこまりました。──よし、始めろ!」


ライマーは部下たちに合図した。

指示を受けた役人たちは、広場から人を追い出しはじめた。


彼ら──役人たちは皆、エスターキルシュの家来、あるいはその下に仕える者たちだった。


彼らは大声を出して、街の人々を広場の中心から遠ざけている。イスが片付けられ、庁舎の横手に集められてゆく。


さと子は作業の様子をただ眺めていた。


(手伝わなくていいのかな?)


チラリと横目でミアを見ると、彼女もまた、背筋の伸びたいつもの姿勢で待機モードだ。

今はまだ自分たちの出番ではないらしい。

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