#11
小鳥たちは鉄鍋からあふれて、好き勝手に飛びまわっている。
居心地がいいのかしらないが、さと子の頭の上でも、ずいぶんかまびすしい。
だんだん収拾がつかなくなってきた。
「たくさん食べさせて。体力をつけさせるのよ」
と、ミア。
さと子は両手で麦粒をすくいあげた。そして、ミアの真似をして城壁の外へさし出した。
いっせいに小鳥たちが群がった。
「きゃぁああ! あぁああ! きゃぁあああっ!」
やっとの思いで、小鳥たちを城壁から追い立てた。八十二枚の出店証はすべて飛び去った。
と思ったら、まだ鳴き声が聞こえる。
さと子が城壁のふちから顔を出すと、下の方の出っ張りに数羽がたむろしている。
「あんなところにいた」
体をよせあって、羽をつくろったり、さえずりあったり。自分たちが出店証であることを忘れているようだ。
「さぼってるわね」
ミアが火かき棒を手に取った。そして、鍋底をガンガンとたたいた。
驚いた小鳥たちは、あわてて飛び立った。
「これでよし」
空になった麦の袋と鉄鍋をかかえて、ミアは階段を下りてゆく。
(……ちゃんと届くのかしら?)
ケシ粒みたいな影が、風にあおられて散らばってゆくのを、さと子はヒヤヒヤしながら見つめていた。
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