5
──5分後。
「これで、取り敢えずは終了ね」
仕切り直すようにルアがそう言った。
「けど、いいのか? これで?」
ソクゴがそう質問した。
「──この永眠には、どうしても弱点が存在するぞ……」
「あなた達3人の内の誰かが死ぬと、その魔法の効力が失われるんでしょ?」
「そうだ。たぶん俺たちは魔力のおかげで長生きだと思うが、無限では──」
と、ソクゴは言いかけて、チラリとミヨクを見つめ、「……いや、アイツはよく分からんけどな」と付け加えた。
「──少なくとも俺は、不老ではない。何年くらい生きるか分からないが、1000年は難しいだろうな」
「それで充分よ」
ルアはそう答えた。
「──そもそも、考え方が違うの。ラグン・ラグロクトは必ず殺さなければならない存在なんだから。だけど今回はどうしても殺せなかった。これは神の誤算なの。わらは本来、ラグンを殺す為に作られた存在なんだから。故に今回の永眠は苦肉の策。致し方のない結果。したがって、この永眠は解けるのが前提条件。その期間までに神はラグン・ラグロクトを殺す事ができる生命体を作らなければならないの。これは、神に課せられた期間なの。だから、わらたちが気に病む必要はないの。ラグン・ラグロクトを倒せなかったわらを作った神の責任なんだから」
神の責任。神が悪い。
──ソクゴはそんな聞きなれない言葉に戸惑いながらも、ルアの説明を納得する事は出来たので「……そ、そうか……な、なるほど……」と返事しておいた。
その時、ミヨクがそろりと手を上げた。
「……あの、俺、まだ確定じゃないけど……不死っぽいんだけど……もしも確定不死なら、ソクゴが死んで封印魔法が解けたら、またラグンと戦わなきゃいけない感じなのかな?」
「その時の神の判断によるだろうけど、その可能性は大いに考えられるでしょうね。単純に不死で世界最高レベルの魔法使いなら、戦力以外の何者でもないから」
ルアが至極当然だといった表情でそう答え、ミヨクが物凄く嫌そうな顔をして、それを見てソクゴが豪快に笑った。
「クハハハハッ! ざまー! またお前あの化け物と戦うのか? 戦って殺されるのか? クハハハハッ! ざまー過ぎて、ヤバい。腹、壊れるわ、クハハハハッ!」
「笑いすぎだ! ってか俺、そもそも不死とか嫌なんだけど。200年くらい生きてきたけど、死ねないのってお前が思っている以上に辛いんだからな」
「クハハハハッ! 仕方ない、仕方ない。不死になってるもんはなってるんだからよ。クハハハハッ!」
「うるせー! 俺だって死ぬように努力するから! まだ確定不死って認めてもないし。ってか、ソクゴ、お前もすぐに死ぬなよ! せめて1000年は生きろ。俺もそのくらいまでには絶対に死んでみせるから」
「クハハハハッ! 1000年か。俺の魔力次第だが、500年以上は生きてやる。だからそれで勘弁しろ。クハハハハッ!」
「ルアもなるべく長生きしてくれよ」
ミヨクはルアにそう言った。
「わらは無理よ。役目が終わったから」
ルアはそう答えた。
「終わってないだろ? ラグンはまだ生きているんだから」
「今回は殺せなかった。それで終了。わらの力がこれ以上になる事はないから何度やってもラグン・ラグロクトを殺す事は叶わない。だから役目は終わり。あとは神がわらの存在を許さない。わらの力は強大だから、役目以外で生きていたら、それだけで世界に迷惑がかかるから」
迷惑。願うだけで世界を滅ぼせる強大な力。
故に使命を終えれば、消えるのが自然の摂理。
「──それでも、14年この世界で生きてきた。戦う事が多い人生だったけど、なかなか楽しかった。あなた達とも出会えたしね」
ルアはそう言って笑った。
そして、その翌日ルアは世界から消えた。
誰ともさよならの挨拶を交わす事なく突然に。
ルアとはそういう存在だから。
◇◇◇
──それから800年の月日が流れ、その間、ラグン・ラグロクトは目を覚ます事はなく、ソクゴも生きていた。
そう、ソクゴの寿命が尽きたつい最近まで。
それにより、ラグン・ラグロクトの快眠を約束していた封印魔法も解けた。外敵から顔を保護していたあの光の球体が。
そして物語りは序章を終える──
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