第26話 おしおきのようなリョウジのヤバい攻め



疲れた。

家に帰ってきて僕はベッドに倒れ込んでしまった。

リョウジとのこと。シモダのこと。今の自分の気持ち。

そして、今日の僕のおこないは、浮気みたいなものだったのかもしれない。

前もこんなことがあった。


なんてことだ。

よくないこと。

ああ


いろんなことがごっちゃになってしまっていた。

腕で目を塞いでいたら、安心して眠気がやってきてしまった。

暗闇の中でも昼の音が外から聞こえてくる。

自分が違う世界に行ってしまったような気もしてきた。


つかれた。。

ほんとに。

。。



気がつくとリョウジの顔が目の前にあった。眠っていたのを起こされたと気がつくのに5秒くらいかかってしまった。フフフと笑うリョウジの顔は僕から離れずにいた。

「ショウ、起きちゃったね」」

「なあに、びっくりした」

「帰ってきたらさ、寝てたからショウの寝顔見てた」

そしてリョウジは僕のほっぺを撫でた。

「ショウの寝顔、超カワイイ」

「ええ、なんか恥ずかしい」

「またショウのいいところ見つけちゃった」

「寝顔は自分じゃわかんないから、恥ずかしいよ」

「メチャかわいかったよ」

そしてリョウジは僕の横に半起きの体制で寝転んだ。

「これから可愛いショウの寝顔、毎日見れて幸せ」

「いや、リョウジの寝顔もかわいいよ」

「マジで」

「うん、いつも思ってた」

「オレどんなの?」

「えっとね、口が半開きで、クカーって感じ」

「なんだそれ、ヤバいね」

「なんかクカーって、面白くて」

「オレちょうアホっぽいな、恥ずかしい」

「いや、かわいかったよ、ニイちゃん」

するとリョウジがもの凄い勢いで僕の上に乗っかってきた

一瞬のほほえみのあとに、キスをしてきた。


「ショウ、やっぱ好き」

そんな事を言いながら、あちこちとこまめに繰り返してきた。まるでキス攻撃のように。

「でも、なんかさ」

「今日のショウ、いつもより」

「可愛いね」

「いつもと違って」

なんて事も言い出してきた。


・・・もしかしたら、今日のシモダとのこと、気づかれたのかも?

いや、ありえない。誰もみていない筈だし。もしリョウジが見ていたら素直に僕に言うだろう。キスをされるたびに罪悪感みたいなものが、沸き起こってきてしまう。

まるで、おしおきのように。


そしてリョウジは、キスを止めて僕の上半身の匂いを嗅ぎ回ってきた。

「ショウのこの匂い、やっぱ好き」

嫌な予感がした後、またリョウジは言ってしまった。

「匂いも、いつもと違うような気がする」

「え?そうかな」

「うーん、でもオレの気のせいかも」

やっぱり、リョウジ何かを勘付いているんじゃないのか。

僕はスキを見て、体勢を変えてリョウジの胸に顔をうずめた。僕の匂いを嗅がれないようにするための、防衛本能が働いてしまった。

すると

「ショウ、ショウからオレに、こうしてくれて」

「うん、、」

「マジうれしい、ドキドキしちゃう」

リョウジの胸からはかすかに鼓動を感じた。それは、さっきのシモダと同じ感じだと思ってしまった。悪いことを自分はしているんだと気がついた瞬間だった。

しかし「ショウ、ショウ」とさらに激しく頭を押さえつけるように身体を寄せてきてしまった。息苦しさと心苦しさを感じてしまった。

「やっぱショウ、スキだよやっぱ」

そんなリョウジの囁きも加わり、これは自分へのおしおきのようなものだろうと思ってしまった。



リョウジは気が済んだのか、僕の横にひじに顔を立てて、僕を見ながら寝転び始めた。

そして胸のあたりをそっとさわりながら、話し始めた。

「オレ今日さ、事務所行ってきたの」

「事務所って」

「ああ、シロタさんの会社ね」

「モデルの事務所か」

「そう。実際シロタっていう会社なんだけどね」

「そっか、どうだった?」

「みんなすげー良い人達ばっかりで、楽しかった。まだ仕事がどうこうかじゃないけど」

「打ち合わせみたいな」

「そう、今後のこととか。ちゃんと話してくれたりして。オレすげーやる気でてきた」

「よかったね」

「うん。でね、もしかしたら集中するために部活やめるかもしれない」

「そうなんだ」

そう話すリョウジの顔は明るかった。前向きな決断なのだろう。

「それだけニイちゃんは本気なんだね」

「まあ、まだ先のことだと思うけど、でもさ」

リョウジは僕に大きく覆いかぶさってきた。

「もし上手く行って金が入ってきたら、ショウのほしいものとか買ってあげる」

「ありがとう、でも別にほしいもの無いかな」

「そっか。ショウらしいな」

「自分がほしいものを買いなよ」

「いや、オレもないけど、あ、あった!」

リョウジは僕の耳にちかづき、囁くように話しはじめた。

「家、家がほしい」

「いえ?」

「そう。マンションとかでも。買ってさ、ショウと住むの」

「え・・」

「今は親の家だけど、自分で買って、今みたいな感じで」

すると覆いかぶさって僕の目を覗き込んできた。

「ずっと一緒だよ、ショウ」


リョウジのその言葉を聞きながら、言い出せない気持ちを思い出してしまった。


(ねえ、僕でいいの?)

(ずっと僕だけでいいの?)

(女の人と、結婚して家を持った方が)

(自分の子ども、ほしくないの?)

(僕とだったら全部できな・・)


そんなことを、ここまで自分を愛してくれる人には言えない。

考えることすら申し訳ないのに。


「ショウ、好きっていうか、愛してるよ」

「うん」

「どうしたの?なんか、ショウ」

心の中が顔に出てしまったのだろうか。リョウジは悲しそうな瞳をしていた。

だから、僕なりに誠意を見せることにした。

「大丈夫だよ、リョウジ。ありがとう」

と告げて、リョウジの頬にキスをした、と思ったらすぐに押し倒されて口にキスをしてきた。

「オレの話、重かったかな、悪いな」

「ううん、嬉しいよ」

「まださ、先の話しだから。オレも焦りすぎかもな」

「でもふたりのこと、いろいろ考えてくれて嬉しい」

「ああ。さっきオレが言ったことはホントだからね」

「え?」

「愛してるってこと」

リョウジはまた抱きついてきた。

その温もりを感じながら、僕は思った。

愛されていて、愛しているのに。

向き合えていない自分が苦しい。


だけど、リョウジがさっき言ったこと。まだ先の話しだ、焦ってはいけない

それはそのとおりだとも思う。

僕は今は素直に愛を受け入れて、返すようにしよう。

そうしよう。


そうしなければ、いけないんだ。



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