第23話 オレ、ショウに依存してるんだと思う
さわり続けた僕をリョウジは頭の横に引き寄せて、また抱きついてきた。
「ショウ、ありがとう、ごめんね。ヘンなことさせて」
「ううん、僕はしたかったからしたよ」
「そっか。優しいね。ってかすげえ気持ちよかった」
僕の耳に近づけて囁いてきた。
「なんかさ、頭ん中まっしろになっちゃった、こんなの初めてだった」
僕はなんか恥ずかしくなってしまった。自分の中になかった自分が、さっきの自分だったから。
「あと、オレを攻めてくるショウ、すげえかっこよかった」
「かっこいい?僕が?」
「ああ、そうだよヤバかった、なんか」
そう言うとリョウジは頬にキスをしてきた。
「ショウのこと、また好きになっちゃった」
そして手を握り、少し振りながら話しを続けた。
「今までは100パーセント好きだったけど、今度は1000パーセント好きになった」
「フフ、よくわかんないけど、ありがとう」
それを聞いたリョウジの目は、これまでとは違う目つきになっている気がした。トロンとしているというか、なんというか。
そしてリョウジは更に僕を強く引き寄せてきた。
「ショウ、オレにくっつついて、もっとくっつこう」
頬や首に何度も口をつけてくる。
このリョウジの求愛の行動には慣れてはいるけど、なんだかいつもと違うような気がする。何かに取り憑かれているかのような、いつものリョウジではないような気がしてきた。
しばらくの時間のあと「トイレに行ってくるね」と告げてその場を離れようとすると
「え、いっちゃうの」
「うん、トイレだよ」
「いかないで」
「困るよ、そんなの」
「オレから離れないで」
僕の袖をつまんで、いかせないようにしてきた。その目はさっきよりも更にトロンとしている。
これは冗談なんだろうと思い、歩きだすと、後ろから抱きついてきた。
「オレも一緒に行く」
「ええ」
歩く僕に覆いかぶさって2人は歩きだした。なんだか変なことになってしまった。
でもその間も首にキスをしてきたり。ううん、ショウ、ショウなんて呟いたり。
トイレは遠くない、すぐつくけど、こんなんだから遠く感じてしまった。
ドアの前に着き振りかえるとリョウジは哀しそうな目をして立っていた。僕はだまってトイレに入る。リョウジは部屋に帰るのだろう。きっと。と用を済ましてドアを開けると、まだそこに立っていた。
「ショウー」とやはり来たかと思ったら「オレもトイレ」と入っていった。なんだ。自分も行きたかったんだ、なんかホッとしてしまった。
そのままベッドには行かずにソファに座ると、すぐにリョウジがやってきて、前に立ってきた。
「ごめんね」という言葉は予想がついた。なので「いいよ別に」と予想通りの返しをした。
隣に座り、下を向いてリョウジは話し始める。
「オレさ、やっぱおかしいってわかってる」
「おかしい?」
「自分ではそう思ってる。オレなんかダメだなって」
「なんで?」
「オレ、ショウに依存してるんだと思う」
「依存・・」
「そう、依存症レベル、ヤバイよね」
驚いたけど、自分を責めるようなリョウジは見ていられない。
僕は近づいて、その手を握った。
「僕は、嬉しいよ」
「ショウ、、ほんと?」
「だってさ、こんなに好きになってくれて、イヤだなんて思うはずないじゃん」
少しの間の後に、リョウジは顔をくしゃくしゃにしてうなりはじめた。
「ああ、ショウ」
そして僕の手を引いて、その胸に寄せ、抱きしめてきた。
「ほんとうにやさしいな、ショウ」
「ううん、そんなことないよ」
「オレ遠慮しなくていいかな」
「うん、でも、さすがにトイレまで来るのはちょっと」
「ブハハ、わかった。悪かったよ」
リョウジは僕の頭をさすって、笑ってそう言った。その胸のあたりをしばらくさわっていた。
僕は言わなきゃいけないことがあったけど言い出せないでいた。いつもこうだ。なかなか自分の思いを伝えることができなくて、なまけているんだ。よくないな。
なんて考えていると、リョウジが僕の手を握ってきた。目が合う。今だ。
「僕、今までリョウジに好きだって伝えることができなかった気がして」
「そんなこと、あったかな」
「今日だって、僕がいつも受け身だったから、さわってくれって、なったのかなって」
「受け身なショウも勿論好きだよ、でも今日のショウも好きだった」
「ありがとう」
するとリョウジは僕の手を掴んで、2人の顔の前に持ってきた。
「これがさ、オレたちの始まりだったよね」
そして指を絡ませて、口をつけてきた。確かにそうだったな。
「ショウと初めて会った時に挨拶して握手して」
「カミナリが、、落ちてきたんだよね」
「そう。でもあの時からオレの気持ちは変わってない」
「カミナリ?」
「好きってこと、変わってないから、ずっとね」
手を離してリョウジは僕に抱きついてきた。
「ショウ、ショウ、ずっとくっついてよう」
「うん」
上から寄りかかってきたリョウジの身体は重かったけど、耐えてじっとしていた。
「毎日どんどん好きになってく」
「そう、僕もだよ」
「マジで」
「うん」
「ショウ、あのさオレ、結婚しよって言ったの覚えてるかな」
「もちろん」
「あれはさ、こんなに人を好きなる事ってもう他にないかなって。オレの人生で」
「えっ」
「だからさ、結婚しよって言ったの」
リョウジは楽しそうに話していたけど、僕の心の中に重たいものを感じ始めていた。
「ショウ、ショウ」
思いとは裏腹に言葉と共に顔に口をつけたりしてくる。
リョウジの人生の相手が僕でいいのだろうか。
「ショウ、好きだよ」
容赦なく繰り出される愛の攻撃に、僕は逆の思いを抱き始めていた。
それは、僕ではなく、普通の人、普通の女の方が良いはずだ
リョウジには幸せになってほしい。それは変わらない。
けど
僕はリョウジを幸せにする資格なんてない。
人間としてあるべき普通のことを僕のせいで無くしてしまうなんて。
でも、僕はリョウジが好きだ。
そしてリョウジも僕のことを。
「ショウって名前良いよね、何度でも呼びたくなる」
そんな事をいう彼に、この顔を見られたくないと思い、胸に飛び込むように逃げ込んだ。
「ショウ、どうしたの」
「なんでもないよ、好きだよ」
その胸から感じる温もりが僕の心を沈めてくれていた。
愛し合っているのに、こんなにツラいなんて。
僕はふたたび迷い道に入り込んでしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます