第19話 リョウジに驚きの展開が‥
あれから僕は淡々とした毎日を送っている。
シモダのことはサッと流すことができた。たまに他のやつに向けるのとは、違う感じで僕を見てくる気がするけど。。
それよりも、僕の頭の中はリョウジのことでイッパイになっている。ますますと。ますますと。
日毎にリョウジの美しさ、かっこよさが増していると思う。それに比べて僕は、だなんて事はもう思わない。それを越えるような愛をリョウジが僕にくれるからだ。
と、思うようにしている。
世の中は上手くいくことばかりではないのだろう。
そんな思いに寄り添うかのような事が始まってしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今日は帰り遅くなる、メシは食ってくるとリョウジからメッセが来た。
僕と違って忙しいんだと日々実感している。自分も何かやった方がいいんじゃないかなと思うのも、日々実感している。。
でも、僕はリョウジと結婚したんだ、この家の事をやればいい。掃除に洗濯。ああ忙しい。
そんな自分にうっとりしていた。自分は果たして妻なのか夫なのか、どっちなのかななんて考えていると、いつの間にか時間は過ぎていて、玄関から「ただいまあ」という声が聞こえた。
迎えに行くと、そこには輝く物体が立っていた。
もちろんリョウジだ。
輝いてしまったのは、いつも見る物体とは違っていたからだ。
髪、髪を切ったんだ。
「えへへ」
と頭を撫でて照れくさそうにするリョウジ。
気を取り直して見ると、その短くなった髪型は目がくらむほどに似合っていると感じた。
「ああ、あの」
「切っちゃった」
「ああ」
「どうした」
僕の腕を掴み身体を寄せるリョウジ。その顔が近くなる。
それまで髪が長いとはいえないけど、無造作に伸びていて、それがまた魅力でもあったリョウジが、爽やかショートになり、その顔もよく映えるようになっている。
やっぱり兄はかっこいい、かわいい。。
「すごく、似合って、、るよ。。」
「ショウ、どうした、おかしい、体調悪い?」
「いや、あまりにもリョウジの髪が良くて、似合っていて」
「え、そんなに?」
「うん。かっこよくて、眩んじゃって」
その言葉を聞いて、なぜかリョウジは笑いをこらえているようだった。
「なんだそれ、まあ、良いことってことかな」
「そうだよ、そう」
「ありがとう、ショウ。嬉しい」
そしてリョウジは僕を優しく抱きしめてきた。
「オマエが気に入ってくれたら良かった」
「うん。だけど、リョウジはどうなの?」
「ああ、気に入ってるよ」
「良かった。僕よりも自分が気に入らないとね」
そう言うとリョウジは微笑んで目を合わせてきた。その顔からは今までに無いような光を感じた気がした。
「じゃ、着替えてくるね」
と去るリョウジもきれいな光と共にあるようだった。
「飲み物、ありがとう」
いつものソファにリョウジが座ると、僕が用意したアイスティーを飲みだしたリョウジ。そんなところも絵になるな、なんて考えてしまった。
するとその時「ショウ〜」とリョウジが僕をソファに押し倒して抱きついてきた。
「ええ」
驚いていると顔を擦り寄せてきた。
「ショウといるとやっぱり落ち着くう」
「どうしたの、なんかあったの」
「うーん」
リョウジは大きめのため息をついた。なんだか疲れているのだろうか。とりあえず頭をやさしく撫でた。引き続きうなり声を上げるリョウジ。その姿はいつもと変わらないリョウジだった。
だから聞いてみた。
「今日、何かあったの?髪切った以外に」
「うん」
リョウジは起き上がって、一旦座った後に僕の目を見て話しはじめた。
「今日さ、オレ、スカウトされた」
「え、何に」
「ああ、・・モデルにならないかって」
しばらく言葉が出なかった、何かを言おうとかと思ったけど。あっけに取られていたけど、リョウジは僕をずっと見ていた。
「でも知らない人からのスカウトじゃなくて、オヤジの知り合いの人」
「そっか、ビックリしたけど、そうなんだ」
「うん。シロタさんっていう人で、なんか事務所の社長やってる人。小さい頃から、よく会ってて」
そういえばリョウジの父は広告代理店を経営している人だった。だからそんな感じの繋がりもあるのだろう。
「前から誘われてたの?」
「そう。なんとなく言ってきてはいたけど、まだオレも子供だったから。様子を見てたみたい」
「そっか、目のつけどころは流石、社長だね」
「アハハ。でね、髪切ったのもその流れ」
「そうなんだ」
「とりあえず、オレの写真を撮っておこうってなって、ちょっと髪が伸びてるから整えようとなって、すぐ近くの美容室で切ってもらった」
「そんな事がサッとできるんだね」
「ああ、シロタさんの事務所、たぶん大きいところだと思う。だからかな、モデルだけじゃなくて俳優とかもいるらしい、よくわかんないけど」
話しが予想以上に大きくなってきてしまった。
「で、その後に事務所の中にあるスタジオみたいなところで写真撮ったの」
「すごいね、モデルみたいな感じで?」
「まあ、そうかもね。カメラマンの人が超良い人でノセてくれて」
そう話すリョウジの瞳が輝き始めているような気がした。
「その後、撮った写真をモニタで見せてくれてさ、ちょっと感動して」
すると目を合わせてきて、こう言った。
「オレ、やりたいと思った。モデル」
笑うリョウジの顔は、これまでとは違う、大人としてのものだと、僕は感じた。
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