第17話 僕とシモダが両思い?

昼休憩の時間になり、シモダに促されて昨日行った場所に向かう。

先を行くシモダは時々ふりかえって僕を見てくる。笑顔を浮かべながら、なんだか楽しそう。正直ちょっとかわいい。。でも、この人にはカノジョがいるのだ。そんなことは思ってはいけない!

今日はなるべくシモダの彼女の事に話しを絞るように持っていかなくては。そう決意した。


昨日とは違い、今日は前のグラウンドには誰もおらず、周りにも人の姿はなかった。

少し嫌だなあと思いシモダを見ると、パンを黙々と食べているだけだった。早く食べ終わりたいのだろうか。

沈黙がきまずいので、僕から話しかけることにした。

「あの、彼女さんにどんな感じでコンタクトしたの」

「あー」

ゴクリとペットボトルのお茶を飲みこんで、シモダは話しはじめた。

「今度の日曜に会いたい。時間空いてるかな、こんな感じ」

「シンプルだね」

「そう。オマエが言うことを参考にして、返事も、OK、だけだった」

「そっか。言う通りの人なんだね。面白い人だね」

「実際に会うと結構話す人なんだけど」

「そうなんだ。まあそんなもんだよね」

僕達は笑い合った。良い感じだ。今日はおしまい。

だと思っていたら

「昨日、悪かったよ」とシモダが頭を搔きながら目をそらして話す。

「あー、もういいよ」

「オレさ、止まんないんだよね」

「え?」

「こうしたいと思ったら、止まらない。だからヨシダにあんなことしちゃった」

これは、どこかで聞いたような話しだ。それはもちろんリョウジだ。全く同じことを言っていた。。

「まあ、わかったけど。人前ではしないほうがいいかと」

「だよな」

シモダはわかりやすい感じで肩を落としていた。気の毒に感じたのでフォローをする。

「まあ、これからも友達として、普通にやっていこう」

「おお、そうだな。ありがとう。オマエ良いヤツだな」

ようやくシモダに笑顔が戻った。これで終わりと思っていたら

「記念に握手しようぜ」

ときてしまった。けど、握手くらいならと手を差し出した。

すると、シモダはなかなか手を離さず、しばらくその手を動かしていた。僕の肌を触るかのように。おかしい。すると、

「なんか、オマエの手、キモチいいな」

怖くなったので、僕から手をを話した。

「悪い、キモかったかな」

こんな事も前にあった。それもリョウジだ。全く同じことを言っていた!

ヤバい、どう考えてもリョウジとシモダは似ている、もう否定できなくなってきてしまった。でも冷静に返した。


「いや、そんな。でも、彼女さんに悪いよ」

「そうだな。そうだ。オマエの好きな人にもな」

そうだった。僕にはリョウジがいる。当たり前のことだけど。改めてそう思った。

シモダとは友達として、、というか僕をどう思っているのだろうか。わからない。

「あのな、聞きたいんだけど」

話を始めたシモダは意を決したように見えた。

「オマエのさ、好きな人ってどんな人?」

「え、どんなって」

「オレの彼女の話ししたみたいな感じで、教えてほしい」

「ああ、そうだね」

対等にいたいということなのだろうか。ひとまず無難に

「優しくて、面白い人」

「そうか、例えたら誰に似てるとかあるかな?芸能人とか」

「うーん」

どうしよう、僕は言いたくなってしまった。でも、それはよくないけど。

頭の中がフラフラしてきたのがわかった。僕はおかしい。

いやおかしくない。

「どした?」

という声に僕は思わず言ってしまった。言ってはいけないあの事を。

頭の真っ白さに一瞬の戸惑いを自覚した中で、声に出てしまった。


「うんと、シモダくん」

「オレ?」

「似てる」

「どういうこと?オレみたいな女がいるの?」

「ええと」

「まあ、そうなんだ。オレに感じが似てるってこと。オレの彼女とヨシダが似てるようなもんってことかな」

「そう」

ここまでの自分の返答はよく覚えていない。その次のシモダの言葉を聞くまで。

「ってことは、オレはヨシダにとって悪くないってことかな?」

「えっ」

「そうなるよね。ヨシダが好きな人がオレに似てるなんて」

「ああ」

これもリョウジが似たような事を言っていた。。


するとシモダは僕に近づき、両肩に手を乗せてきた。

「な、オレたち ある意味で両思いだったってことかな」

「え?」

「そうだろ?オレは嬉しい。そう思ってくれてたなんて」

「ちょっと」

「ヘンかもしれないけど、このまま両思いの友達としてうまくやっていこう」

「何??」

「アハハハ」

すると、シモダはまた僕の頬にキスをしてきた。してしまった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る