第23話

 警部補はどこかの森の中に迷い込んで仰向けに倒れていた。その頃の弁護士の録音データにはゆっくりといびきのようなものが聞こえていたが、後日、解析し速度を速めると、自分の頭が見える、という警部補の言葉だと判明した。通話はそこで終わる。

 警部補は数ヶ月後に顔がへこんだ状態で見つかる。第一発見者の猟師の話によるとその死体は腐敗が始まっていたのに、へこんだ箇所だけは肉が腐敗もなく、ウジもハエもたかっていない。眼球がわずかに運動していたとの事だった。自分の後頭部が見える、という話はブラックホールの中に人が入った場合に起こる現象の一つとされている。頭部に当たった光が一周して自分の目に映る。

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