第16話

 同じ時刻、警察官の父を持つ少年のほうの母親が何者かに襲われた。顔の眉から下、目鼻、うわあごまでがプレス機で押し潰されたように長方形に20センチ以上へこんでいた。

 最初に気づいたのはその少年だった。ソファに座ってテレビを見ていた母親からいびきのような音と水が泡立つような音が聞こえたので、よく見ると母親の顔が変形し、目と、耳、口と、鼻のあった位置からぐちゅっ、ぐちゅっ、という音を立てて、血が泡立ちながらしぶきを上げていた。瞼も押しつぶされていたが、眼球は前に飛び出していて、ほんの僅かに少年のほうへ向かって動いているように見えた。

 それと同時に、少年は家の庭に、あのモンタージュ写真に描かれたゆがんだ顔の男が立っていて、母の姿を目の当たりにして叫ぶ自分を見ていたという。

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