第5話

 Aは見なくても、声を聞かなくても手を握るだけで自分の息子を認識する自信があった。それは大きさや形だけではない、重みが感じられたからだと言う。実際の手という物質の質量を除いたとしてもなお、確かにこの重さは実在する。加速器による粒子の衝突時に散らばったヒッグス粒子がその重さを与える一部分を担っていると私は確信している。手を握られた。Aは初めての粒子を提供した、加速器実験の後に、そう発言した。重みがあり間違いなく息子のものだと断言していた。

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