第4話 克服への第1歩

昼休み、私は担任の中山先生と共に職員室に向かった。職員室に入ると、知らない男性が立っていた。

「初めまして。私はスクールソーシャルワーカーの小林です。何か困ったことがあれば、気軽に話に来てください。力になれることがあればお助けします。」

私はビックリした。スクール、ソーシャルワーカー?…何かよく分からないけど、助けてくれる人?。いきなり何が起こったのかよく分からなかったが、名刺のようなものをもらい、昼休みが終わり教室に戻った。家に帰って、改めて名刺を見た。スクールソーシャルワーカーの小林と書かれている。裏を見ると、「毎週水曜日の昼休み、SCルームにいます」と書かれていた。

小林さんは見た感じ優しそうな人で、少し頼ってもいいかなと思った。


次の週の水曜日。昼休みのチャイムが鳴ったら小林さんに会いに行こうとした。でも、SCルームってどこにあるんだ?1階に校内図があったので探してみたら、2階の美術室のさらに奥にあるみたい。そんな部屋知らなかった。少し怖がりながらもSCルームに向かった。SCルームに着くと「ただいま、空いてます」という看板があった。私はノックし、部屋に入った。

「こんにちは。来てくださったのですね。ありがとうございます。立ち話もなんなので、座ってください。」

小林さんは表の看板を「ただいま、面談中です」に変え、席に着いた。

「改めまして、スクールソーシャルワーカーの小林です。よろしくお願いします」

私は小さく頷いた。

「中山先生からお話を少し伺いました。でも、具体的に何で困っているのかは知らないので、岡田さんの好きなタイミングで教えてください。」

何か安心した。まだなぜ小林さんが私に声をかけてくれたのか分からないけど、頼りになりそうだ。

「と言っても、初対面の人に悩みを相談できないですよね。」

と言って、小林さんは机の引き出しから何かを持ってきた。トランプだった。

「これはアイスブレイクと言います。初対面の人などが仲良くなるためにゲームなどをすることを言います。トランプのぶたのしっぽというゲームはご存じですか?」

私は知らなかったので、首を傾げた。小林さんはルールを説明してくれ、実際に遊んでみた。意外と楽しかった。

昼休みは決して長くない20分。でも、充実した20分を過ごせた。


次の週の水曜日も、私は小林さんのいるSCルームに向かった。すると看板が「ただいま、面談中です」となっていた。今日は別の人が面談をしているみたい。諦めて帰ろうとした。するとドアが開いて

「岡田さん、こんにちは。今週も来てくださったのですね。今、別の方とオセロをして遊んでいました。岡田さんも一緒に遊びませんか?」

どんな人が一緒にいるのか分からないが、SCルームに入ってみた。すると、女の子が座っていた。名札を見ると渡辺さんと書かれていて、緑色だったから2年生の人だ。

「今日もアイスブレイクをしてみましょう。今日は簡単なクイズでもしてみましょう。」

と言って、クイズが始まった。

「私の好きな食べ物は何でしょう?」

そんなこと知らない。小林さんの好物なんて。

「失礼しました、本題のクイズに入りたいと思います。」

私は、今日は3人で20分間アイスブレイクをした。クイズは2択だったから、挙手で答えることが出来た。今日も結構面白かった。

「また一緒に遊びましょう。今日も来てくださってありがとうございました。」

そう言われて、教室に帰ろうとした時だった。一緒に遊んでいた渡辺さんが

「楽しかったね。唯花ちゃん。また遊ぼうね」

と言ってくれた。私は嬉しかった。先輩に声をかけてもらえるなんて。でもおかしい。私は下の名前は名乗っていないのに、なぜ唯花だと知っているのだろう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る