第34話 移り変わる状況
僕がリハード先生に魔人になったと告げられたあの日から約3年の月日が流れた。
僕が魔人となっても、ハーミルくん達の僕に対する態度は全く変わることはなかった。
ハーミルくんが相変わらず僕と一緒に遊んだり話したりしてくれるし、ロントくん魔法のことを語り合う仲で、フィモラーちゃんは花の話をしてくれて、ルラーシアちゃんからは色々と言われることが多いが、それでもなんだかんだ仲良くしてくれているのだ。
しかし、それでも時間は経っていく。
魔法学校3年生になった僕たちは、あと2年で魔法学校を卒業しなければならない。
つまり、みんなとはそこでお別れなのだ。
ロントくんは既に15歳になり、ルラーシアちゃんは14歳に、僕、ハーミルくん、フィモラーちゃんは13歳になった。
そして、嬉しい、いや面白い、いや良いうわさもある。
ロントくんとルラーシアちゃんがお互いを意識しているという噂が僕たちと同学年の人たちの間で噂になっているのだ。
僕たちのクラスは、どうやら他のクラスからは一目置かれている存在だそうで、そういった情報が他クラスに流れていることも少なくはない。
なんだったら、僕たちが知らない情報ですら、あっちでは出回っていることもあるのだ。
「で、リーバルトはどっちだと思う?」
廊下の隅に隠れながらロントくんとルラーシアちゃんを尾行しているハーミルくんはそう言った。
ロントくんとルラーシアちゃんは、片方が手を伸ばせば触れれる程の微妙な距離感で歩いている。
「どっちって?」
僕がそう聞くと、ハーミルくんは「そんなの決まってるよ」と言う。
決まっているものなのか。
「どっちが先に告白するかだよ」
なるほど、確かにそれは興味深い。
ロントくんはああ見えて結構積極的だからな、ロントくんが先に告白してしまうかもしれないが、個人的にはルラーシアちゃん側から告白することもありえなくはない。
「迷うな……」
僕がそう呟くと、ハーミルくんがあははと笑って「僕もだ」と言った。
「何してるの?」
突如として後ろから声をかけられた。
「うわぁぁ!?」
僕とハーミルくんは同時に叫んで後ろを急いで振り返った。すると、そこには僕たちの声に驚いて固まっているフィモラーちゃんが立っていた。
「なんで叫んだの……?」というような表情で彼女はそこに立っている。
「ど、ど、どうしたの……?」
フィモラーちゃんが困惑してそう僕たちに聞く。
「え、えっとコレは……」
やばい、なんと言い訳をしようか。
ルラーシアちゃんとロントくんの後をつけてたなんてバカ正直に言ったら、フィモラーちゃんの純粋無垢な心が本人達に話してしまうかもしれない。
「これは……そう! 掃除、掃除だよ。ほこりが落ちてて……」
ハーミルくんが咄嗟にそう言い訳したので、僕もそれに便乗する形で大きく頷いた。
「そうなの……? 魔法学校の掃除って基本的に
フィモラーちゃんはそう言って、首をかしげる。
変な所で感の良い女の子だ。
「──大方、私達を尾行してたんでしょ?」
真後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
その声は少し怒っているような、呆れているような、そんな雰囲気がまとわれている。
「な、なんで……」
なぜ……? 僕たちの尾行は完璧だったはずなのに……!
そこらへんの支柱に隠れながら尾行すればバレないと思ったのに……!
「尾行をするなら、もうちょっと考えてから行動してよね。
いきましょ」
そう言って、僕たちの後ろに立っていた白銀の長髪が特徴的な人物は、コツコツコツと大きな足音を立てながら歩き始める。
そして、その足音に紛れて、ルラーシアちゃんとロントくんの幸せそうな笑い声が聞こえた。
ラブラブじゃんかよぉ。
「な、なんかごめんね……?」
フィモラーちゃんがそう言って頭を下げて謝る。
フィモラーちゃんはその純粋な心を持ち続けてほしいな。
「うんん、大丈夫だよ。あの二人を尾行していたのは本当だし」
僕がそう言うと、フィモラーちゃんは「えぇ!」と驚嘆の声を漏らした。まさか掃除をしていたという嘘を本気で信じていたのか。
……ごめんよ、嘘をついて。
「それで、フィモラーちゃんはどっちだと思う?」
ハーミルくんは悪びれもせず、僕に聞いたことと同じことを口にする。
フィモラーちゃんは何のことかわからないだろうな……僕もそうだった。よし、ここで僕が格好良く教えてあげるとしy……。
「私はルラーシアちゃんからだと思います!」
えぇ……? あの質問の意図を初見で理解できたの?
僕の察する力が弱すぎるだけなのか、フィモラーちゃんの察する力が強いのか……。
僕は後者の方だと思うが……後者の方であってくれ。
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