第26話 テスト期間
「ああそうそう、今日から一週間後に実技と筆記の定期テストをするからね」
僕が入学してから三ヶ月が経ったある日、僕たちはいつものように授業が終わり帰り支度をしていると、リハード先生が突然そう言った。
は? 定期テスト? そんなの聞いてないぞ。
「先生、私達定期テストがあるなんて聞いてないんですけど」
ルラーシアちゃんが僕の考えていたことと全く同じことを口にした。
「そりゃそうだ。言ってないからね」
リハード先生はなぜか勝ち誇ったような顔をしながらそう言った。
先程の言葉のどこにも勝ち誇れるところなんて無かっただろうに。
「まっ、そんなこんなで、勉強頑張ってね!」
先生はそう言って、ルンルン気分で教室を出ていった。
先生はルンルン、僕たちはモヤモヤ、おかしくない?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日から一週間の間、僕たちは来るテストの日まで勉強を開始した。
国語、算数、歴史などの一般科目から、基礎魔法、詠唱魔法などの魔法学校ならではの勉強もする。
算数や歴史、基礎魔法はある程度わかるのだが、詠唱魔法と国語だけがどうしても難しい。
どちらも苦手なのには共通点がある。
それは言語の問題だ。
国語は、やはり文字の読み書きが難しい。
脳が日本語で思考しているからか、どうしても異世界の人間語には慣れないのだ。会話はできても、読み書きが難しい。
こんなことになるなら会話だけじゃなく、読み書きも日本語変換されるようにあの天使に頼めばよかった……。
そして詠唱魔法。
これは本当に難しい。魔術書に載っている文だけじゃ、どういう風に発音すればいいかわからないので、誰かが詠唱しているのを真似しないと形にすらならないのだ。
「ロント君、この詠唱魔法ってどんな風に発音すればカッコイイかな?」
流石に、「この魔法ってどんな風に発音するの?」なんて聞いてしまったら稀代のアホ扱いをされるので、僕はさりげなくそう言っている。
アホ扱いされるのと、厨二病扱いされるのとで、ギリギリ後者のほうが勝ったので、僕はこのようにしている。
「適当に高らかに叫べばいいんじゃないかな? 『ヴィエヤビャーク!』こんな感じにね」
ロントくんはそんな僕の問いに、呆れながらもちゃんと答えてくれるのだ。
こいつは将来いいお嫁さんができる、僕が断言しよう。
「そうか! ありがとう!」
僕がそう言うと、ロントくんはあはは……と苦笑いをした。
やはり厨二病の痛いやつ扱いされてる。
「あぁそうそう、そういえば基礎魔法で聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
ロントくんは僕にそう言ってきた。
僕はロントくんに詠唱魔法の発音の教えてもらうかわりに、ロントくんに基礎魔法を教えているのだ。人は助け合いが大事だからね。
「いいよ、どんなことをやりたいの?」
「水の基礎魔法で、地面の土を泥にするんだ。そしてできた泥で壁みたいなのを作りたいんだけど……できるかな」
ロントくんがそう言ったので、僕はいい感じにアドバイスをする。
と言っても、基礎魔法は実際にやってみないと口頭だけでは上手くできないので、大抵は外に出て実践してみるのだが……教える側もそれなり難しいことが今になって分かった。
変な理論を使ってとかそういうのではなく、「頭の中で想像して、それを魔力を使って現実に映し出す」という、まるっきり感覚的なことでしか基礎魔法は使うことができない。
感覚というものを教えるというのはかなり難しく、それに僕の説明下手な性格も相まって、教えるのにはかなり時間がかかるのだ。
「土の中に水を染み込ませる感じで……ああ違う、土の中からじゃなくて、土の表面部分から水を染み込ませないと中途半端に……」
案の定、泥の壁を作るという基礎魔法を教えるのに、半日以上も掛かってしまった。
そんなこんなで月日は流……いや月と言う程でもないな。
そんなわけであっという間に一週間という時は経ち、僕たちは定期テスト本番を迎えることとなる。
まず国語、算数、歴史。これらは意外と簡単に解くことができた。算数は当たり前として、国語が結構解けたということが僕は一番驚いた。
そして、最後に残るのは魔法の実技テストである。
魔法の実技テストは詠唱魔法、基礎魔法の2つの魔法の種類でテストが行われ、それぞれに威力、範囲、制御の3つの項目でテストの結果が反映されるそうだ。
「じゃあまずは詠唱魔法から。
詠唱魔法は『ヴィエヤビャーク』『ノズヴォドニィ』の二つをしてもらうからね。ヴィエヤビャークは風属性の魔法。ノズヴォドニィは水属性の魔法だ。
ロント君からの開始だよ」
そう言ってリハード先生が僕たちの杖を風属性の基礎魔法で叩き落とす。
どうやら実技テストでは杖を使ってはいけないらしい。素の自分の能力が見られるというわけだ。
緊張してきたな……。
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