第30話 生活再建

 ステージに光の五芒星ペントグラムが2つ現れ、床から上へと移動する。

 ジオンとパオロンが現れる。

 ジオンにはチムチムがパオロンにはユウリンがそれぞれ抱きついた。

 お互いクシャクシャと頭をなでる。

 ユウリンの方が泣き出した「心配した。両手が動かないのに飛び込むから」

「済まん」

「我はジオンの事、信じていたゾナ」

「それでハンフリーの方はどうなりました」

「死んだょ、

 自分が呼んだ餓鬼に喰われてな」

「魂を死の精霊レイスに引き渡して、輪廻転生させるのも馬鹿らしい。

 ほっといて、オークの怨霊にでもなったがいい魂だ、

 一から忘れて善業を行い、功徳を積んでなど、あの魂の性質では考えられない。

 同じ失敗をして、迷惑をかける」

「餓鬼に喰われた魂は、餓鬼道に落ちます。

 そこは肉体を得ても、未来永劫続く飢えと渇きの中、仮に食事がとれても味がしない、無限地獄の苦しみがあるだけ。

 ハンフリーの魂は幸福とは遠い所に行ったのでしょう。

 人類を菩薩になって救うと言われたブッダだって「アレは救われぬ衆生」と諦めた魂もあるのです、変われる人は変われますが、変われない魂は何度生まれ変わっても同じ罪を犯す。

 許されざる罪があるというのも傲慢ですが、全ての魂が救えるというのも人間の真実を見ない盲目的行為。

 ジオン殿は人間的に、人間社会的に、因果応報的に正しく処理したと思いますょ、私はソフィアの信徒ではないから罰の量刑は司法哲学によるなんて言いませんょ」

「ヨハンは理解が早くて助かるょ」パオロンを見て「ケリがついた。そっちはこれからどうする?」

「リュウ老師は後継者を指名せずに死んだ。各地で支部を任された血族による血で血を洗う抗争に発展するだろう。

 我々は血族しか信じはしないし、仮に後継者を指名しても争いは避けれなかった。

 権力をとった者による九族皆殺しは我らの伝統。

 権力を獲るか獲らないかは家族の死活問題だ

 生きたければ権力を取り、財産を独占するしかない。

 私個人は高く買ってくれる所に高く売るだけさ。

 それよりアンタはどうする?」

「俺は『楽園』を探している」

「『楽園』とはえらく抽象的な」

「旧世界の技術がこの奈落アビスの中に眠っている。

 メリルがマスターキーを持っている。

 何か帰らずの部屋があるとか神秘情報はないか」

「ダンジョンの管理や魔石の流通は冒険者ギルドの縄張りだ、事を構えるには下手な暴力団や騎士団より実力組織だ。

 商売のみかじめ料をとり、盗品の売買や売春の斡旋がメインストリームだ、お互い不可侵だからダンジョンの構造は良く知らん。

 だが神秘な噂として額に宝石人のような宝石がある幻獣がいて、言葉を知っているらしい。

 ソイツなら何か知っているかも」

「ダンジョンを案内できる、薬草を中心にすえた回復師ヒーラーでも雇いませんか、流石に僧侶クレリックを雇うと我ら刃傷沙汰ですから」ヨハンがジオンに告げた「それからハンフリーが絡み、誤解があったとはいえ、我らは自動人形オートマタを一体失ってますし、ジオン殿は使い捨てのポーションを大分使った模様。誠意ある対応をお願いしたい」

「謝罪が欲しいのか?」

「お互いに大人だから金銭で解決しましょう」

「金貨1000枚だ。

 俺達が今払える限界だ」

「山分けすれば俺的にはお釣りが来るが、アンタの方はどうだ。自動人形オートマタの値段は皆目見当もつかない」

「まあ、トントンですかね。色々検討して合計すれば赤字だと思いますが、これからの苦労をお互い考えるとここで手を打つべきでしょう」

 宿屋の代わりに暗黒魔導士は奈落アビスに潜るまで滞在することになった。

 色々魔法的に手伝うこともある。

 ジオン達は冒険者ギルドで案内人を募集する中、街で装備を整える必要があり、秘密結社を後にした。

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