第27話 再会

「みんな無事?」

 チムナターが扉を開けて叫んだ。

「「「「チムナター」」」」

 4人が同時に叫んだ。

「フハハハハ。

 実験体の副産物とはいえこんなものです。

 もっと崇めていいんですょ」

 チムナターは両手を腰に当ててない胸を張った。

「良く無事で心配したんだよ」

 ダビデが泣きながら抱きつこうとする。

 ヒョイとかわした。

 何もない空間を抱きしめて、転がりかけるダビデの首根っこをチムチムが握って支える。

 チムナターは駆け出してサロメにしがみつく。

「心配したょ、レイプされたりしなかった?」

「ええ。

 向こうもあなたが脱走してから、てんやわんやの大騒ぎ、それどころじゃない感じだったし、実際あなたは助けに来てくれた」

 再会を喜んだ後、魔法使い5人全員がスクと立ち上がり「ジオン・サルディーラ王子。

 この度の助力。

 感謝の言葉もありません」

 ヨハンが口火を切った。

「ジオンでいいょ」

「アンタがあのジオン・サルディーラだったのか」

 3人が驚愕した。

「ヨハン様、その事ですが。

 ジオンに今回助力を頂くにあたり、さる契約を取り交わしまして…」

「それはどんな契約だね」

「なんとわれらがジオンの探索の旅をタダでお手伝いをする」

「おお、チムナター。

 魔法使いにとって契約は絶対。

 お前が約束したなら、我ら5人。やぶさかではない。

 ジオン殿に受けた恩義を返そうではないか」

 魔法使い達はなんだか上手くまとまったとか、チムナターグッドジョブと思いながら口にはださなかった。

「そんな訳だ、

 ヨハンでいいか、

 共闘することになった。

 よろしく」

 ジオンか右手をさしだした。

 ヨハンは両手で固く握った。

「さすがジオン殿。

 我々がやられた相手を簡単に仕留めるとは」

「簡単ではなかったょ。

 実力は伯仲していた。

 ほんの僅かの差が結果を大きく変える、

 武を志す者の残酷さだ」

 ジョンが大袋をもってやってくる。

「魔法使いさん達から取り上げた、小道具やら持ってきました」

 魔法使い達が自分の杖やら触媒を確認する。

「お前、杖が返ってきたなら返せょ」

 一向に返す気のないチムナターに催促した。

「はあー、何の事ですか。

 GICは運命に導かれてここにきたのです。

 あなたはタダの運び手に過ぎません」

「凄い財産なんだぞ」

「魔法を使えない、あなたが持っていても意味があるんですか?

 GICは5本しか使えないマジックミサイルを8本にまで引き上げてくれ、消費魔力を押さえ、達成値や威力を上げ、触媒も無しで呪文スペルを唱える優れ物。

 あなたはGICの価値さえわかってないでしょう。

 一流の音楽家に一流の楽器を貸与するのはパトロンの義務です。

 コレは死ぬまで借りておきます」

「泥棒する気か?

 それはカステラヤ魔法王国が宮殿の奥深くに安置していたマジックアイテムだぞ。

 ポーションのようにポンポンやれる品じゃないぞ」

「人聞きの悪い、一生涯・無利子で借りるだけです。

寿命の無いハーフアルフのクセに、薬漬けの短命な実験体の死が待てないのですか。

 だいたいカステラヤ魔法王国も前線で使わないから戦争に負けるんですょ、アナタのアイテムボックスに保管されるだけの人生なんてGICが可哀想だと思わないのですか」

「一理あるなぁ」

「哲学戦闘でジオンが押されているゾナ」

「変に頭がいいとだまされるのょ、なんだかんだで人がいい所もあるし」

 メリルがクスリと笑った。

「何でしたらオッパイ触らせてあげましょうか。

 男の人、好きでしょうし」

 チムナターが無い胸に人差し指をかけて見せた。

「チムナター自分を大切にしなきゃダメです。

 愛する人ができた時、後悔します」

 ダビデがチムナターの胸を慌てて隠す。

 テメェが触ってるじぁんと皆が思った。

 触られても特に抵抗はしなかった。

「実験体とはいえキチンと大人になれ、

 そしたら考えてやるょ」

「手当たり次第とはスケベな男」

 エルザが他人の恋愛に文句を言う。

「まあ、王族だからなぁ」

 ダッキが庇う。

「ダビデ、お前の装備をまとめて置いたぞ」

 ヨハンがダビデに手渡した装備の中に剣があった。

「魔法剣士なのか?」

「彼等の様に空中浮遊したり、幻影や分身したり、ジャンプからの範囲攻撃などの三次元戦闘は身につけていませんが、振り上げて相手の背後に瞬間移動テレポートして振り下ろすなどのテクニックは一緒に学びましたからら、魔法剣士の対処法などは知っています」

「ならコレを渡しておこう」

 マルスのアイテムボックスから一振りの刀を取り出した。

 明らかに分厚くて古墳時代の遺跡から取り出した、青竜刀を青銅にした形。

 切るより、撲殺にでも使えるようなイメージ。

 ジオンはダビデに手渡した。

「コレは?さすがに重いですね。

 私に殺傷力を出せるほどの速度で振れるでしょうか」

「次元刀だ、空間を切れる。

 触れるだけで切断する。

 他にもこういう使い方もできる」

 ジオンがなにもない空間をさすと、刀身が消え、ニュウとダビデの顔の左横にでてくる。

「コレは凄い」

「チムナターのアーティファクトと違って、旧支配者の技術オパーツだ、カステラヤ魔法王国が世界中から掠奪したもののひとつだ、魔法なのかさえわかってない。

 風水師と戦う事になる。

 コレを君に渡しておこう。

 チムナターに影響されたのか魔法使いでない俺が持っていてもしょうがない。

 有効に使ってくれたまえ」

「何やら時空を超えられた感じですね」

「時は超えられない。

 やり直しも効かない。

 不可侵だ。

 ヨハンはどんな能力を使える」

「元々は座学の人。

 錬金術アルケミーの研究者です。

 触媒や魔導書を使った呪文使いスペルキャスターです」

 義手を取り付けたジルを見ながら。

「あちらの被曝者は?」

「ジルは魔法技師マギテックです。

 自動人形オートマタの制作をメインにしてます。

 生命の根源として火の精霊サラマンダーと契約しています。

 炎を使って闘います」

「あちらの女性の悪魔は?」

「悪魔召喚ですょ、

 儀式魔法も含めて、悪魔なら系統が違っても供物の量を増やせば別系統も使えますから」

 聖痕者スティグマート贈与ギフトを送られて、朝起きてから寝るまでに聖痕スティグマ一つにつき一回能力を得る。

 白魔法使いは契約や制約ある生活を送る事で女神ソフィアから加護エイラーンを得る事で魔法や魔力を使えて特に才能はいらない。もちろん厳しい制約を課せば多くの量をもらえる事になる。

 多くの信者が祈るなか、中心となる司教を軸に唱える大魔法もある。

 人生を捧げる白魔法使いにたいして、悪魔の方は純粋に供物であり、魂や羊を捧げ、器が満たされれば魔法が発動する。

 テクニックとして、儀式魔法で発動するギリギリまで器を満たして、戦闘中目をつぶり、魔力を捧げて乱戦の中発動させるというのもある。

 人間の魔法使いと違い悪魔達は学習しなくても別系統の魔法を生活魔法として使ってくる。

「戦闘系な感じはしないが、ソフィアのように汚れ仕事を行うような特殊部隊はないの?」

「暗黒魔導師連合とか名乗っていますが、対ソフィア戦用の互助組織で全体的な統括者はいません。

 勉強会や講演会を開いて派閥や学閥や閨閥を横断てきな物が幾つもあり、その中から、我々も一つになるために魔王を創造しようとか魔神召喚しようとかあるんです。

 ヨハンの誘いに乗って派閥の代表が集まってきただけでガチガチの戦闘系ではないですょ」

 目の前には修理を諦めたジルが「私の自動人形オートマタ 」と涙を流している。

「用意が済んだらいよいよハンフリーの所にいくぞ」

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