第6話 |構成精霊使い《エレメンタリスト》
ジオンが歩いていると1匹のハエがついてくる。
おかしい。
他に餌場ならある。
バザールとはいえ、この時代はそれほど清潔な場所はない。
ハエぐらいどこにでもいる。
直感が告げる。
おかしいと。
長年の経験から直感は正しい。
(殺しておくか)
翔んでるハエを更に素早い動きで、親指と人差し指で挟む。
少し覗きこんだ。
ブチ。
潰すと虫ではない。
赤い血が溢れてくる。
「魔術か・・」
「占い小道」と立て札がある。
左から3番目のテントに入った。
「ジオンの坊やじゃないか、3日で会えるとは思わなかったょ、何かあったのかぇ」
多くの宝石をまとった老婆が台座に髑髏を載せて座っている。
「もう、坊やの年じゃない。メリンダ」
「ハーフアルフは年を取らないからつい間違えてしまった。
先に逝く者には敬意を払うもんだ。
そう目くじらを立てるもんじゃない」
ジオンは座って空になった精霊籠をおいた。
「この婆の預言の通り、
「近々運命を帰る出会いがある、なんて詐欺師の常套文句だろうが」
「頭の良すぎる男は嫌いじゃ。
お主の父親は面白がっていたのに、母親に似おってからつまらない男になったのぉ」
「親父は誰とでも寝る男なんだ」
「婆の若い頃の美しい思い出まで汚しおって。
お前の父親には占いの全てを教えたのに」
「詐欺の全てだろう」
「用はなんじゃ、トットと済ませて帰れ」
杖を取り出してジオンの額をこづいた。
「
このままでは旅を続けられない。
新しく契約したい」
「やっと
あと2年程で婆は死ぬから、それまでに修得できるじゃろう」
「旅を急いでいる。
後継者はいないのか」
「5人程いる。
もう教えることはなくなった。
みな独立した。
1人だけ死ぬ時、枕元に立つから、死体の片付けにきてくれと頼んである。
流石に死後の世界まで小道具は持っていけんから、そやつに全部やるつもりじゃ」
台座をはずしてお茶を出した。
大陸中央ではビタミンを獲得する為の野菜がない。
お茶は貴重品でこの地では同じ重さの銀と取り引きされていた。
大陸中央東部の宝石人が
「そうか、逝くか、淋しくなるな」
信用しているのか毒味することなく飲み始めた。
「見送るのは妖精の血の宿命じゃ。
嘆き悲しむ必要はない。
今日はお主も
香を焚き始めた。
薄紫の煙が満ち、心地よい甘い香りがする。
「普通に金貨5枚で精霊を売ってくれればいい」
お茶を飲み干した。
「大いなる精霊からの夢のお告げがあってな、何の事かなぁと考えておったら、お主が帰ってきた」
ゆっくりと香台をジオンの前に置き対面に座った。
「お主の
かなりレアなケースだが別口で指導霊も憑いておるし、戦場で
「やれやれ教会には寄進してるし、あらゆる宗教の経を読んだが以外と役に立たないもんだ。
俺を視ただけで震えて泣きだす
一つは憑依型、口寄せ、降霊、降ろす、自身の身体に乗り移らせて知識やスキルや魔法を使うタイプ。
一つは脱魂型、幽体離脱をして情報を取ったり、
一つは共感型、交霊術とも呼ばれて霊が視える。周囲の霊や
ミランダは3つ共、高次元で修めている。
「未熟者の話はおいといて、お主の指導霊と婆の
安心せぃ。
とって食ったりはせん。
お主を
飲み物には麻薬が、香には大麻が含まれている。
「勝手なことを」
目の前がキラキラしてきた。
身体は脱力してきたが崩れ落ちる程ではない。
リラックスしてきた。
「お主の師匠にはなれなかったが、
年寄りの親切は若者は遺言だと思うて受けるのが義礼じゃぞ」
イニシエーション。
断食や激しい修行を行えば|脳内麻薬『エンドルフィン》が発生して神秘体験をする。
その脳の生理現象を利用して新興宗教や創唱仏教などが信者を獲得している。
もはや金の流れを見極めて、教祖の人格を見極め、教団の人間性を見極めて信じるしかない。
メリンダは父親と肉体関係があり、昔からの知り合いで信用できた。
「人を待たせてある、長いことは付き合えないぞ」
覚悟が決まるとジオンも行動が早い。
剣聖ダーヨの直弟子である。
座禅を組むと背筋を伸ばして印を結び、静かに小さく呼吸をして、目をつぶって瞑想した。
「父親と違って基本はできておる。
幽体離脱中は時間が長く感じるが、
ジオンの前に香を置き、座禅を組むとジオンの額に手のひらをかざした。
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