第5話 メリルとマルス

 近くに金髪の女がいる。

 馬小屋に左耳の聴覚を置いてある。

 魔法の中に視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、第六感で点を作り移動させることができる。

 魔法技術として線、球体、結界、シャボン玉、クラウドに融合できるが余計に魔力が必要。

 あまり距離も取れない。

 魔力が必要。

 水晶玉で連絡をとる手段があるが、空間を使った儀式魔法で双方準備がいる。

 長距離のテレパシーは血縁などのブロックをかけても感応者に聞かれる可能性がある

 狼煙を見て、幽体離脱で事情を聞きに行くのが最速とされている。

 金髪の女は先程からジオンとメリルの会話を盗み聞きしている。

 人差し指を立てるとわずかな肉が変化して、黒いハエになるとジオンの後を追跡し始めた。

 ジオンが去るとメリルは練習するのを止めた。

 まず馬の首輪をつけた。

「マルス、これでしゃべれる」

「非道いですね、ジオン様人里に入るとコレ外すんですょ」

 マルスがしゃべりだした。

 おしゃべりが好きなのだろう。

 メリルはマルスをブラッシングするため台座を用意する。

「練習はもういいんですか?。

 学者先生だから真面目かと思っていた」

「悪かったわね、真面目じゃなくて。

 明日から気合を入れてやるわょ」

「ジオン様、王子時代剣聖ダーヨから直接指導を受けた高弟子の1人ですよ、

 部下の兵士だって指導を受けたことがないのに。

 とてもありがたい事なのに、

 親の心子知らずとは良く言ったものだ」

 メリルはブラッシングをかけ始めた。

「兵士って、どんな訓練しているのよ」

「今は常備兵だから剣、槍、弓と一通り、珍しい所で集団戦法や攻城兵器の解体や組み立て塹壕掘りなど冒険者がやらないこともやります。

 昔は槍を持たせて首を狙えと言って戦場に出していた。

 ジオン様は誠実で親切ですょ」

「私が悪者みたい。

 それより聞くも涙、語るも涙の話聞かせてょ。

 気になってたけどジオンあまりそういう話し好きそうじゃないから」

 マルスは涙を流して、

「聞いてください。

 お嬢さん。

 アッシはこう見えても白魔法が使える、断食など多くの制約を持った修道士フランコだった」

 白魔法は多くの制約をかけて、教会に寄進して、質素倹約、清貧に暮らした方が、神の恩寵が多い。

 旧教の幹部は白魔法が使えない貴族の三男以下が多く、法皇にいったては宮殿のような教会で、複数の愛人に囲まれていた。

 基本貴族は血のスペアで跡取り騒動が起きないように、庶子でない子供を放り込み、戦争で跡取りが死んだ時還俗させる。

 ソフィアが降臨していた古いソフィア正教を体現していた修道士フランコ修道女シスターの方が尊敬を集めていた。

 権力闘争に参加できない、処女と童貞を守り白魔法が使える下級神官達は神学校で医学を修めて病院を作ったり、薬草学を学んで回復士ヒーラーになったり、孤児院などを作り読み書きソロバンを教えたりして本当の権威を守っている。

 さすがに貧民街の施しとかは教会がやっていた。

「厳しい修行の日々がかえってアッシを純情にしたんです。

 彼女は美しいというより素朴な人でした。

 時を過ごすと共に恋に落ちたんです。

 アッシは白魔法を失い、駆け落ちしたした」

「素敵な話」

「お嬢さん、愛した人と決して結婚してはいけません、現実は厳しい。

 アッシらが甘かったんです、一生懸命働けば何処の街で暮らしていける。

 お腹の子まで養っていけると。

 でも元修行僧フランコなんて手に職が無いもどうぜん。

 そして背教者の汚名がついてまわり、子供達から石をなげられる始末。

 噂のないところを求めて、街をてんてんと。

 子供が産まれて衣食住を与えられない」

「男として情け無くて、人生に絶望していた時、

 サルディーラ王室の極秘研究所から声がかかったんです。

 魂を売ってくれ。

 もうソフィアの教義ドグマには背いているんだろう」

「アッシは妻に相談せずに金を残して立ち去りました。

 魔法で強化された、この馬に魂を焼き付けしました。

 母娘で探しにきたと研究所から聞いてます。

 てもアッシはジオン様と共に戦場に行きました。

 途中参戦てジオン様の騎乗馬になりました。

 5年後、戦争終結。

 アッシはジオン様に妻子がどうなっているか知りたいとお願いしました。

 娘は神学校に通い始めたそうです。

 妻は再婚してました。

 世界は女が1人で生きれるほど優しくはない。

 夫婦てのは家の共同経営者なんです。

 世間の同調圧力で周囲に歓迎されながら結婚するのが正しかったのです。

 貴族に至っては財産相続「妻に惚れるなんてアイツは狂ってる」という言葉があるほど。

 彼女の選択を恨んでいません。

 生きていく為に当然なんです」

「旅に出かける時、ジオン様に行って新居に行きました。

 娘を引率の先生に引き渡している彼女を見た時、胸がいっぱいになりました。

 コレで良かったんです」

「マルス、あなたもいい人ね」

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