(人を信じること無かれ その5)

「ハッ!かァ――」


 小馬鹿にするようにグバンはそれを見て鼻で笑った。


「よく知ってたじゃん。説明する手間が省けた」


「そりゃァ、何でこのアジトを掘ったと思ってんだってェ、話だァ」


 確かに言われてみれば、自然のものでないのなら、こんな山を潜るように広がっている洞穴を掘るにはダイナマイトのような火薬が必要不可欠だろう。全くの盲点だった。


 ロアの胸の内に想定外のことに対する、不安感がうっすらと広がった。


「そんでェ、そんなもんでェ、何するってかァッ」


 ロアがダイナマイトを持っているというのに一向に怯える様子もなく、だが先ほどまでと違い低俗に笑うこともなく、ただ高圧的にグバンはロアへと言葉を飛ばす。


 グバンが今の状況をどのように捉えているのかロアには読み取れなかった。だが、実際のところを、今ロアが手に持っている一本ではたとえ爆発させても、ロア自身と、グバンにも届かないくらいのロアの周りの範囲を吹き飛ばすことしかできない。


 だが吹き飛ばす場所次第ではいかようにもできる。例えば落盤を防ぐ支柱なんかを。そのために100日間、コツコツとダイナマイトを作っては見つからないようにこっそりと仕掛けてきた。


 今こそ、それが報われる時。


 ロアは一度首を振ってから、グバンに向かって高らかに宣言する。


「このアジト内に、これと同じダイナマイトを仕掛けたっ!私が点火すれば一瞬でお前のアジトは崩落して土砂に埋もれる!それが嫌なら今すぐ私を解放しろっ!」


 そんなロアに対し、グバンは間髪入れずにためらうことなく、


「やれるもんならァ、やってみろがァッ」


と怒鳴り返した。その目は一切笑っていない。


 小娘の戯言だと高を括っていれば、こういう反応にもなるのかもしれない。


 ロアとしては、大人しく解放してくれた方が最良ではあったが、どうせそうはならないだろうとも予想はしていた。

 

 今の私は死んでしまうし、再定着リスポーン地点もおそらく未定になってしまうけれども、そこのところは次の私に託すことにしようとロアは覚悟を決めて息を大きく吸い、一言、


「転火!」


と叫んだ。


 途端、ロアの魔力から作られたダイナマイト内部に蓄えられていた素魔力が火炎へと変換され、爆薬が爆ぜ、衝撃波が周囲へと広がる。


 ドゴンッという鈍い音が遠くから聞こえた。

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