第5話 軟禁ですか?監禁ですか? その3

「あれっ? お嬢ちゃんは……」


 どこかで聞いたことのある声色の声を聞いて、思わず私は後ろを振り返りました。


「ああっ、やっぱり! あの時の! ええと確か、そう、メアリちゃん!」


 赤い鎧をまとった男の人が、そう言いながら私を指さします。


 上を見上げて顔を見て、ようやく私もこの男の人が誰なのかを思い出しました。


「こんにちは、いつかの冒険者さん」


 そうです。そうなのです。あの時、私がドラゴンの炎に焼かれたときに、一緒に消し炭にされて、4人冒険者パーティのリーダーの人が、眩しいほどの笑顔で私の後ろに立っていたのです。


「いやぁ、でもほんっとうによかった! あの後、お嬢ちゃんがどうなったのかずっと心配していたんだよ」


 目を潤ませながら、リーダーさんは私の両手を握って、軽く上下に揺らしました。


「あの~、サンドライト様、このお子さんをご存じで……?」


 ギルドの門番の人が、訝し気にリーダーさん――どうやらサンドライトという名前の様ですが――に話しかけます。


 すっかりサンドライトさんとの偶然の出会いで注意が逸れていましたが、そもそも私は今、この街のギルドの前で門番の人と押し問答をしていたところなのでした。


「ご存じも何も、このお嬢ちゃんが、あの凶悪なドラゴンを退治してくれたメリアちゃん、そのお人さ」


 そう言って、サンドライトさんは私の肩を持って、私の体を門番の人の正面に向けました。


「えっ、それではあなたがあの有名なメリア様で……? こっ、これは大変失礼いたしました! どうぞご自由にお入りください!」


 それまでとは打って変わって、礼儀正しく敬礼して、門番の人は私とサンドライトさんを通してくれました。


「それにしても、門番と何を揉めていたんだい?」


「それが、君みたいな子供が冒険者のわけがないと言われまして……」


「なるほど。でも、少ないけれど子供の冒険者もいるにはいるのにね」


「私がギルドの会員章を持っていなくて、それで冒険者だと信じてもらえなかったみたいです」


「えっと、もしかして、失くしちゃった?」


「いえ、昔、どうしても私の会員章を欲しいという人がいまして、その人にゆずったので。Sランクの会員章なので再発行することもできず……」


「メリアちゃんも太っ腹なことするな~」


 そんな会話をしているうちに木立の中の小道を抜けて、ギルドの建物の前までたどり着きました。


 前の街のギルドは一階建てで、老朽化も少し進んでいましたが、首都の手前の街と言うこともあってか、二階建てで、外から見る限りではとても新しそうに見えました。

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