第4話 軟禁ですか?監禁ですか? その2

「はぁ……、街は人が多すぎ……」


 そう言いながら、レイさんはベッドに倒れこみました。


 私も隣のベッドに腰を下ろして、窓の外を眺めます。宿の前の街道は人が行きかい、賑やかな音が窓を通して耳に届きます。


 そんな道を通ってきたのがレイさんにとってはどうやら苦行であったようです。


「来てから聞くのもなんやと思うけど、どうしてここがよかったん?」


 しばらくして気分を持ち直したレイさんが、ベッドの上をゴロゴロと転がりながらそう聞いてきました。


 昨日、そう、軟禁ですとつぶやいたその日の夜、夕食のビーフシチューを一緒に食べているときに、どこに行きたいかと聞かれた私は、元々行く予定だったセレアーナ公国の首都の手前の街を答えたのでした。


「次の巡礼の街がここでしたので」


 そう私は短く答えました。


「ふーん……」


 もう少し突っ込んで聞いてくるのが普通だと思いますが、レイさんはあえて踏み込んだ質問は控えたようでした。


「これから、街中を歩き回ろうと思うのですが、レイさんはどうします?」


「うちはいいや。ここで寝てる」


 レイさんはうつぶせになって枕に顔をうずめていました。


「それではいってきます」


 一言そう言ってベッドから立ち上がると、パシッとレイさんが私の手首をつかみました。


「これ渡しておく」


「財布ですか? お金は使いませんよ?」


「まあ、一応。あと、紅茶に合いそうな甘いお菓子とか見つけたら買ってきてな」


 そう言い終えるのと同じくして、スーッという寝息をレイさんは立て始めました。


 仕方がないので収納空間インベントリにしまい、部屋の出口に向かいます。


 ドアレバーに手を置いたところで、寝言のような声で後ろから、


「よる……まで……、もどっ……な」


と聞こえてきました。


 それには答えないで黙ったまま、ドアレバーを下ろして、部屋の外に出ました。


 レイさんには、大変申し訳ないですが、夜までに帰って来られる確証が私にはありませんでした。

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