第3話 軟禁ですか?監禁ですか? その1
小川に足を浸し、どこを見るというわけでもなく、
ただ、ぼんやりと遠くを私は眺めていました。
はるか遠くに壁が、空には天井がうっすらと見えますが、
ここの不思議な空間は、それほど閉塞感を感じさせません。
思えば空だって、飛んでいけるわけではないですし、
本などから、あの青いのが壁ではなく、ただの色だと知っているだけで、
そういう意味では、空に天井があるのと何ら変わりはないのかもしれません。
そして、実際、そのさらに上の青空を抜けた先には
目には見えない滑らかな壁があるのですから。
そんなことを取り留めもなく考えてしまうほど、今の私は手持ち無沙汰でした。
この不思議な空間、レイさんの話によれば、
世界の底、この世の下限に位置する場所らしいのですが、
ここにつれて来られてから早一週間、
私にはまったくやるべきことがありませんでした。
もしもレイさんでなければ、この閉鎖空間にいても
洗濯炊事掃除などの家事全般という形で、手伝えることもあったかと思います。
ですが、レイさんには、これらのことは必要ないのです。
むしろ、私がやってしまうと迷惑をかけてしまうだけです。
レイさんはあえて私にそのことを話していませんが、
私はそのことを知っています。
おおよそ、私にできて、彼女に出来ないことと言えば、
私の固有スキルの能力くらいなものです。
それほどまでに、レイさんは万能と言えるでしょう。
そのレイさんはと言うと、今はこの地下世界にはいないのです。
毎日、日中はここから出て、地上でいろいろとしているらしく、
夜になると戻って来て、一緒に夕食を食べて、就寝します。
ですので、日中の現在、私はこの世界にぽつねんと取り残されているわけです。
「これでは、軟禁と変わりありません……」
「ごめんね、いつも一人にしちゃって」
振り向くと、さっきまで姿かたちもなかったレイさんがそこに立っていて、
すまなさそうに両手を合わせていました。
「どうせここで日がな一日時間を潰してしまうのでしたら、
外に連れ出していただけないでしょうか?」
そうお願いすると、レイさんは腕組みをして空を見上げました。
「そうやよなー。ちょっと一日考えさせてな」
そう彼女が言い終わった瞬間には、
もうそこにはレイさんの姿はありませんでした。
仕方がないので、私は再び小川に足を浸して、遠くを眺めます。
レイさんも、もう少し考えてることを話してくれてもいいのにと
心の中で私は呟きました。
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