第24話家政婦ロボットside

 二週間後、旦那様は御帰りになられました。


 それはいいでしょう。

 ですが、何故ですか。何故、スーツケースの中に生ものを入れるのですか?!

 意味が分かりません。

 これが人間の常識なのでしょうか?

 わたくしのデータは「NO」と言っております。


 し・か・も・です。


 生ものは「お土産」だと言うではありませんか!

 何故、別にしておかないのですか!!


 何が入っているのか分からない異様な臭気を発生させているスーツケースの中に入れるべきものではありません!!

 

 よくまあ、空港チェックに引っ掛からなかったものです。


 

 

≪旦那様は食中毒を大量発生させたいのでしょうか?≫


「何の話?」


≪……皆様に御配りなさいます『お土産』の事でございます≫


「ちゃんとした店で買ったものだから食中毒の心配はないよ?」


 そういう意味ではございません! と、思わず声を上げそうになりました。危ないところでした。わたくしの理性はよく頑張っておりますね。褒めてあげましょう。それにしても旦那様はやはりおかしい人間だと再確認いたしました。使用済みの下着や靴下と共に無造作に入れられた『お土産』など誰も欲しくありません。旦那様から『お土産』を受け取る憐れな方々には同情いたします。



「どうしたんだい?ミス・マープル」


 不思議そうな顔の旦那様。

 どうしたのではありません。ああ、顔を傾げるのはおやめください!わたくしがおかしな事を言っている錯覚に陥るではありませんか!!


 いけません。

 平常心、平常心……。


 わたくしの言いたい事を全く理解なさっていらっしゃらない旦那様。因みに、異臭の放つスーツケースは後日処分する事にいたしました。臭いがどうしても落ちなかったのです。申し訳ございません。プロの家政婦ロボットとしてあるまじき行為だったと思います。ですが、あの異臭に耐えられなかったのも事実なのです。



 


 こうして旦那様との攻防戦が続いていきました。



 



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