第25話エリックside

≪わたくし、このままロイド様の家政婦ロボットを続けていく自信がございません≫


 名だたる研究者達が総力を挙げて作り出されたミス・マープルがとうとう白旗を上げた。うちの会社が総力を挙げて造ったロボット。研究者たちはロイドに怨嗟の声を上げている。そりゃあそうなる。ミス・マープルの自信が粉々に砕かれたのだ。


「ミス・マープル、君はよくやった」

 

≪いいえ!わたくしは『敗者』でございます。敵を前にして尻尾を振って逃げ出した『負け犬』です!!≫


 ヤバイ。ミス・マープルの精神面がヤバイ方向にいってる。というか、いつの間に戦いになっていたんだ?それとも最前線の心持でいないとロイドの世話はできないという事だろうか。


「ミス・マープル、相手が悪かっただけだ」


 そう言うしかなかった。

 何も間違ってはいない。事実だ。手のかかる幼児の方がロイドよりマシなぐらいだろうから。落ち込んでいるミス・マープルのメンテナンスをどうするのか研究者達の間で意見が分かれている。ここ数ヶ月の記憶を消去させるかで。


 結果としてはミス・マープルの記憶はとどめておくことが決まった。

 何でも、常人には理解しがたい人間がこの世には存在するのだという事を知っておくべきだという理由だった。確かに、色んな人間がいるからな。納得のいく回答だ。


 


 一週間後、マスミが帰ってきたとロイドから連絡があった。


 

「おい、離婚したんじゃなかったのか?」


「失礼だな!離婚届は出してない!!マスミは実家に帰っていただけだったよ!!!」


「はぁぁぁぁぁぁ!!?」


 

 それは離婚手前って事じゃないのか?

 別居婚の申請の間違いでは?


 マスミが帰ってきた事で狂喜乱舞するロイドでは全くと言っていいほど話の流れが飛びまくりで、よく分からなかった。



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