第23話家政婦ロボットside

 一週間の休暇メンテナンスを終えて、わたくしが旦那様のマンションに戻ると部屋は大変な事になっておりました。


 足の踏み場もないとはこの事でございます。

 いえ、それ以上に酷い有り様です。

 

 錯乱した衣類と生もの。

 散らばったナニカの破片。


 知らない者が見れば空き巣被害にあったと思われるでしょう。寧ろ、プロの泥棒の方が綺麗な散らかし方をするのではないでしょうか?

 そう思う程に酷い惨状でございました。



「ミス・マープル。帰ってきて早々悪いんだけど、俺、明日から二週間ほどフランスに出張するんだ」


 まあ!

 それは僥倖!


≪畏まりました。それでは、お留守番をしっかり務めさせていただきます≫

 

 旦那様が出張で留守の間に、この惨状を隈なく清掃ができるというもの。しかし、何故でしょう? 旦那様は苦虫を噛み潰したような顔をなさっておいでです。

 

「……ああ、頼んだよ。でも、留守中何か困った事があったら、すぐに連絡してくれ。どんな些細な事でもいいから――絶対に電話してきてくれ」


 念を押されました。

 何かあるのでしょうか?

 わたくしの疑問を察したのか、旦那様は詳細を語ってくださいました。

 何でも社交界で何故か旦那様の再婚話が話題に上がっているらしいのです。そのため、良家の御令嬢ならびにその御家族の来訪を警戒なさっているということでした。

 ……恐ろしい話でございます。

 この旦那様と夫婦になろうと考える女性がいようとは。この国の女性は男性を見る目はないのでしょうか。正気の沙汰とは思えません。

 何はともあれ警戒を怠る事はできません。用心するに越したことはありません。来客の方々には細心の注意を払うべきですね。万が一にも粗相があってはなりませんから。



 

 

「それじゃ、行ってくるよ」


 そう言うと、旦那様はフランスへ旅立たれました。


 さて、旦那様も居ない事ですし――まずは片付けに取り掛かるとしましょうか。

 こうして、わたくしの奮闘が幕を開けたのでございます。


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