第8話メシマズ ~一日目の昼食~


 家政婦ロボットのマープルは働き者だ。

 朝から忙しなく動いてる。


 

≪旦那様、昼食が出来上がりました≫


「手料理なんて久しぶりだな。何を作ったんだい?」


≪はい。本日は肉料理に致しました。イギリスの伝統料理です≫


「へぇー。そう言えば俺、イギリスの伝統料理ってあんまり食べた事ないや」


≪そうなのですか?≫


「ああ、実家は基本フランス料理だったし、結婚してからは主に和食だった。まあ、俺の奥さんは料理上手だからね。多国籍料理をいっぱい作ってくれたよ。その中に魚のフライがあったっけ。奥さん曰く『イギリスの伝統料理よ』って言ってた」


≪そうなのですか?≫


「うん。出来立て熱々のフライに奥さん直伝のソースをかけると最高だったね」


≪料理上手の奥様ですね≫


「そうだね。肉中心だった食生活が魚やら野菜やらと増えた。どれも美味しかったよ」


 ああ、妻の料理はどれも絶品だった。

 思い出したら目が滲んできた。いけない。


「ところで昼食の肉料理ってどんなの?」


≪羊の肉を使った料理の“ハギス”です≫


 テーブルの上にデンと置かれた黒い塊を見て……ちょっと泣きそうになった。

 なにあれ?

 肉の塊?

 え?こわっ!

 その前に本当に肉?!

 色がヤバくないか?!


 えっと、もしかして……これ?

 これを食べろというのか? これがハギスなのか?

 どうしよう。見た目で判断して悪いけど絶対にマズイよね、これ。それに臭い。うわぁー…………。

 

≪さあ、旦那様召し上がって下さい≫

 

「えっ?!」


 コレを食べろと?

 

≪どうかなさいましたか?≫


 大丈夫だろうか?

 いや、見た目が悪いだけで食べたら案外美味しいかもしれない。


 パクリ。

 

「んぎゃーーーー!!!」


 無理!絶対無理! 不味いとかそういうレベルじゃない。

 口の中に広がるなんとも言えない苦みとエグみ。臭くて酸っぱい臭い。

 吐き気が込み上げてくるほどの不味さだ!

 こんなの食べるくらいなら雑草を食べる方が遥かにマシだよ!!

 

 俺は急いでトイレへと駆け込むと吐いた。


 別のベクトルで凄まじい。

 



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