一章
第1話 初心者ダンジョン①
日本人によるダンジョン攻略成功のニュースが世界に流れて10年。
小規模にかかわらずダンジョン攻略を果たした彼女らは英雄と呼ばれ、続いてダンジョンを攻略していった。
今ではダンジョンは世界に溢れ、小規模ダンジョンは学生の教育実習の一環として扱われるようになり、ダンジョン攻略及びダンジョン資源の確保は学生の義務となったのである。
とある地方都市にすむ少年。
「よーし、一列に並べ」
学校の校庭に並んだ生徒。男女合わせて62人。
今日は授業の一環でダンジョンに潜ることになっていた。
「本日の授業は、第一層での狩猟・採取。時間は3限までだ。モンスターもお前たちの実力からすればたいしたことがないだろう。だが油断はするなよ。大怪我して夏休みを病院のベットで過ごしたければ別だがな」
「先生、そんな奴いませんて」
「どうだか、例年隠れて階層移動する生徒がいてな、制限時間過ぎても帰って来れなくなる馬鹿がいるんだよ」
先生の脅しともとれる言動に一部の生徒が苦笑いをした。
「私たちの班はそんなことしないわよ」
「そうだぜ。なっ、正宗」
「お、おう」
「ふん、あなたたちのお守りも私たちがしてあげるんだから感謝しなさいよ」
「なんだと春日井っ……いえ、何でもありません」
「わかればよろしい」
僕たちの班は全部で 5人。
男子は僕ともう一人、
残りの 3人は女子。しっかり者の幼馴染である
祖母が北欧系だという双子の姉妹。姉の
その 5人が僕たちの
いや、僕たちだけでなくクラスの男子、学校全体、日本全国、世界中で男子の立場は弱かった。
それには訳があり、
その比率は 7:3 で女子の方が多く、男子は学校で肩身が狭かったのである。
「ほら、私たちも行くわよ」
最初の班が移動を開始した。目指すは学校横にある岳並神社の一角。
赤い鳥居が異界への門となっており、ダンジョンの入口なのである。
僕の手を引いて歩くのは幼馴染の岩村 穂香。
学校カースト最上位であり、学級委員長も務める才女である。
その才女はなぜか、何かと俺の世話を焼いてくる。
美人で才女である穂香が何で目立たない存在である俺を構ってくるのか理由はわからないが、俺としてはありがたかった。
穂香のおかげで僕はクラスでも虐められず、その恩恵を受けることができていた。
家も近所で幼稚園に入る前からずっと一緒……いわゆる腐れ縁ってやつ。
美人でスタイルも良く、特に胸はかなり大きい。
明朗活発で誰にでも気さくで人気者。さすがはカースト最上位。
男友だちから言わせると彼女にしたい女性ナンバー1らしい……
だが、俺から言わせるとコイツの顔なんて見飽きてるし、余計な世話もときにはしてくるコイツのどこがそんなに良いのか理解に苦しむ。
まあ、スタイルの良さは認めるがな……
「準備が整った班からスタートしろ」
先生の指示のもと先発の
「よし、俺たちも行こう!」
気合を入れた俺たちも続いてダンジョンに突入した。
空間の歪んだ鳥居を潜ると、そこは幅10m、高さ4m程のレンガ造りの通路が広がっていた。そして明かりもないはずなのに、なぜか視界は確保されている。
この岳並神社にあるダンジョンはいわゆる迷宮タイプのダンジョンであり、攻略済みの初心者向けダンジョンである。
攻略済みのダンジョンは湧き出るモンスターも制限されるが、その分得られる資源も少ない。
だが、ダンジョンデビューしたばかりの僕たち高校1年生からしたらワクワクドキドキの場所であり、皆のテンションは上がりまくりだ。
「近場の薬草採取ポイントはたぶん競争率高いから、面倒でも奥の採取ポイントまで行きましょう」
「オッケー穂香」
僕たち1年生の目的はダンジョンに生息するモンスターを倒し、そのドロップアイテムをゲットすること。そして階層に複数ある採取ポイントで薬草や鉱石の採取が目標となる。それらを持ち帰り換金することで資産及び探索者としてのポイントが得られる。そして、その探索者ポイントの合計で探索者のランクが決まる。
僕たち1年生はまだ最低ランクのEランク。
学校を卒業するころには皆ランクCくらいには上がっている。優秀な者ならBやAランクも夢じゃない。
探索者ランク=優秀な人物とされ様々な特典が得られる。
英雄と呼ばれるSランク探索者ともなれば、探索者を引退しても芸能人として引っ張りだこなのだから探索者は若者に人気の職業なのだ。
もっとも……そこにたどり着くまで命がけなのだが、危険を冒さずそこそこ稼いでまったり生活を送るのが最近の若者の流行であった。
通路を進むと茶色い蠢く物体がいた。
「出たわ。あれは…クレイドールね。さっさと倒して先に進むわよ」
現れたのは
特殊武器とはダンジョン産の素材を利用した武具であり、それさえあれば一般人でも泥人形程度であれば倒すことも可能である。
僕たちの持つ武具は学校支給の特殊武具で戦闘訓練も受けている。
なので現れた土人形 3体を倒すのに10秒と掛からなかった。
「楽勝ね。ドロップアイテムは黄色の鉱石かぁ……」
「まあ、そんな簡単にレアアイテム出ないって。次に期待しましょう」
「そうね。ほら嶋岡拾っといて」
「ハーイ」
慎介、お前……春日井姉妹の犬と化しとるな。特に姉の…まあ、いいけどさ。
そうして進むとある程度広い部屋に到達。
そこにはレンガの隙間から生えた白い花の群生地があった。
白い小さな花とハート型をした葉っぱ、その辺に生えてそうな雑草にしか見えないのだが、これこそダンジョン産の薬草であり、ポーションの原料となる特別な品種であった。これを一株持ち帰るだけで一万円になるのだから学生でなくとも美味しいアルバイトになるってもんだ。
班の皆がそれぞれ背に背負ったリュックサックに薬草を詰めていく。
「正宗……良いよな。採取クエストって」
「ああ、そうだな……」
僕たちは薬草採取そっちのけで女子たちを眺めていた。
女子たちが着ているのは学校支給の戦闘服。ボディラインがくっきりと分かるボディスーツにアーマーが付いたものだ。
まあ、男子もデザインが少し違うだけでほぼ同じなのだが……
ダンジョン産の素材を使った特殊繊維でデキており伸縮性と防御力を兼ねそろえた優れものなのだが、正直かなりエロい。
そんなエロエロボディスーツを身に着けた女子たちがしゃがんで薬草を採取しているのだ。ぷりんとしたお尻、むっちりした太ももに魅惑のデルタゾーン。そして穂香のたわわな果実。春日井姉妹も決して悪くないがスタイルだけなら穂香だな。
「ちょっと男子! 何ヤラシイ眼で見てるのよ!」
「あっ―――」
時すでに遅し。ちょーっとガン見し過ぎてしまったようだ。
「正宗アンタねえ。私たちが真面目に採取してるのにアンタは何やってるのよ!」
「……いや、穂香のおっぱい大きいなと―――――ぐえっ! ギブッ! ギブアップッ! 助けて……死ぬ……っ!」
穂香め。ぐへへなスーツ姿で男の僕にヘッドロックを決めるとは、とんでもないやつだ……顔に物凄く柔らかい物体が押し付けられて……シルビアちゃんが止めてくれて助かったものの、危うく昇天するとこだったぜ……色んな意味で。
「スケベ! 反省しろ!」
顔を真っ赤にした穂香が僕の首を放したところで叫ぶ。
反省しろって言うならヘッドロックなんて掛けるなよと言いたいが、小心者の僕にはそんなことは言えるはずもなかった。
そして、僕たちのやり取りを見てニマニマするセリカちゃんがいた。
――――――――――――――――――――――
〜〜 あとがき 〜〜
どうも「たぬきねこ」です。
ここでちょっとキャラクター紹介を。
本作の主人公である仙道 正宗 君。オタク気質のどこにでもいる普通の少年。
ヒロインの岩村 穂香ちゃんは正宗君の幼馴染。面倒見が良く手の掛かる弟のような存在だった正宗君が年頃になったことで気になっています。
6/4 近況報告にてヒロイン穂香ちゃんのAIイラストを掲載しました。
ご参考までにどうぞ。
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