ホームルーム②

「おんなだ」「オトナか」「美人だ!」「キレイ」

教壇に歩いて来たその女は、ロングコートにシャツとミニスカートといかにも「どうぞ襲って下さい」という風な服装だった。殺人犯。サイコパスを四人を相手どり非武装で軽装とは舐めているのか、自信があるのか疑わしいが、それより油断させているつもりなのかという疑問のほうが強かった。

「初めまして、今日から皆さんの担任になります文武文子と申します」

「担任? 嘘を言っちゃイケないぜお姉ちゃん、さしずめ警視庁捜査一課の刑事じゃないか?」

悠馬が文子に冷たい視線を向ける。

「あなたは御門悠馬くんですね。何故そう推測したんですか?」

「逃走中の殺人犯の事を知っていて、それを追いかけるのは警察しかいねえだろ。年齢は十八歳だから逮捕して起訴すれば、死刑の求刑まで楽勝で持っていける。違うかい?」

「それが政府の狙いだからな。成人を十八に引き下げたのは、少年犯罪の抑止力にする為。俺たちを法廷で死刑にして殺さないと、見せしめに出来ない。日本の犯罪件数を減らすのが目的だ」

「御門くんも明智くんも詳しいですね。そうですね、国選弁護人がついても有罪をひっくり返すのも無理だと思います」

文子はクスリと笑う。

「でなければ動物愛護法引っ張り出す事になる。人も動物だから死刑にするのは動物愛護法に反する残酷な行いだとか」

「そもそも、人間はその法律の対象外だろう。それじゃ俺たち人じゃないと思われてれてるのか、バカバカしい」

「そうですね。でも私は、みんなをここで私人逮捕する事はしないので、その心配はしなくて結構です。その代わり、私の授業を受けて貰います」

「授業だと?」悠馬は顔を歪ませた「俺たちに道徳の授業でもするつもりか?」

「そんな事をしても無駄なことはわかっていますので、みんなには漫才をして貰います」

「ま・ん・ざ・い?」陸人は苦笑した。こんな場所に集めて何をさせるかと思いきや漫才とは、この女刑事は本当におかしいとしか思えない。

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サイコパス要請学校 本乃しおり @skathy

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