サイコパス要請学校

本乃しおり

ホームルーム

一触即発。いつ誰が、誰に殺されてもおかしくない状態だった。学校の校舎に集められた生徒達は四名ともサイコパス、反社会的人格障害を持ちここに来るまでに殺人事件を犯している。年齢は十八歳だが「少年法があるから楽勝だ」と呑気に構えていられない。捕まれば起訴され、第一級の殺人罪などで有罪判決は免れない。裁判員は満場一致で死刑を求刑するのは見えていた。無罪の獲得や減刑を得る事も不可能というのは、四人ともわかっていた。したがって全員が殺人鬼であり全員が標的となり得るのだ。

「俺をここに呼んだ奴はどいつだ?」

黒髪の聡明そうな少年、明智陸人は同じく教室に呼び出されてやってきた三名の少年少女を一瞥して訊ねた。

「俺じゃないぜ、張本人はちゃっちゃと自首したらどうだ?」

赤毛の少年、御門悠馬は、鼻で笑いながら一蹴する。

「あたし疑われているわけ? だったら違うわよあんた達の事何にも知らないし」

長髪の黒髪に腰まであるコートを纏い、ショートパンツを履いた少女、木崎ひまりは面倒くさいといった風に答える。

「わたしも違うよ。ていうかこんなとこにわたしらを集めてどうするつもり?」

ショートボブの大人しそうな風貌の姫川カナは苦笑を浮かべる。

「殺し合いでもさせるんじゃないか? オーストラリアに殺人鬼を専属に殺したマーク『チョッパー』リードみたく。そう考えればあり得ない話しでもないだろう」

「そこの偉そうな奴、そりゃ刑務所のヒエラルキーがあって出来る事だろう。刑務所で強いのはギャング、その下に有名な殺人鬼、その下に詐欺師や窃盗犯、汁男優は最下層だ。俺たちがどんな犯罪をしたのかでここのヒエラルキーも決まる」

「それだったらあたしたち、みんな中間層の犯罪者って事になるじゃない。そういえばみんな名前は?」

ひまりは全員に訊ねた。

「姫川カナ、東横女子二年」

「明智陸人、東横附属高校」

「御門悠馬、明智と為だが」

「木崎ひまり、東女子二年。みんな東横の生徒じゃんっ!」

「ほんとだね。奇遇。わたし思ったんだけどひょっとしたら凶悪犯に対抗する為に集められたっていうのはどうかな?」

「姫川といったな、ロシアがやったみたいに囚人を兵士として使うってわけか。有り得なくはないが、俺たちじゃロシアの囚人兵と戦闘力が違うんだ。戦って勝てる確率はかなり低いだろうな」

「明智。そんな事をする為に俺たちをこんな人が来ねえ廃校に呼び出すって日本政府がそんな事をすると思うか?」

「アメリカのロサンゼルスに『セシルホテル』ってホテルがある。名の知れた殺人鬼が宿泊したり売春婦や麻薬の売人が利用していたらしいが、拳銃自殺や飛び降りも相次いでいる」

「面白えホテルだな!」

「まあ取り引きで使った麻薬の成分が充満して、それを吸引した客が頭をやられたんじゃないかと俺は推測しているが、呼び出した奴はここを俺たちのホテルにしようって魂胆じゃないか? 老人ホームが山奥にあるのと理由は同じだろう。隔離だ」

「俺たちを病人扱いか、呼んだ奴も頭イカれてんじゃねえか?」

悠馬が苦笑を浮かべると、教室の扉から女が姿を現した。

「それは、私に対する褒め言葉でしょうか?」

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