21:デスゲーム第二回目【インディアンポーカーポーカー】その3

「僕とチームを? こちらこそ、よろしく頼む! しかしヒマワリ先生も居るなら心強いな!」


 当初の予定通りヒトミちゃんにチームを汲んでもらうように頼めば、こっちが申し訳なくなるほどに、あっさりと二つ返事で引き受けてくれた。


「……誘っといてなんだが、本当にいいのか? ヒトミちゃん。俺たちは、わざと負けるためのチームなんだ。……負けたら、失格者となって、死ぬかもしれない。それでもいいか?」


「うん。僕はあまり、考えるのが得意じゃ無いからね。信頼のおけるきみの頼みなら、例え死ねと言われたって従うさ」


 おいおい、そこまで……。めちゃくちゃ嬉しいが、さすがにそれは、買いかぶりってもんだぜ。

 その信頼、絶対に裏切れないな。


「……助かる。だが安心しろ。絶対に、死なせはしない」


「……っ! ああ! 一緒に生き延びよう!」


 スポーツマンシップに溢れる格闘少女。ヒトミちゃんの男らしい決断により、これで五人チームが完成した。

 他のチームも続々と結成されていき……サナちゃんも、なんとかチームに入れてもらえたようだ。よかった。


『さあ、チームが出揃ったようですね。今回も負け残ったチームがトーナメントを上がっていく方式でやらせていたたきます! はいそれてまは早速、ステージ・オン!』


 運営の指パッチン。それとともに出入り口が開くと、そこから現れた数名の作業員が、いそいそと会場のセッティングを始める。

 俺は気付かないフリをしてそれを感覚視野で眺める。


 やがて、なんか本格的なカジノテーブルが二台。体育館に設置された。

 再びの指パッチンと、それと同時に驚いたフリをした後、運営が満足げに話し出す。


『ポーカーといえば、やはりこのステージでしょう! さあでは、見ての通り、今回のデスゲームはまず四チームずつ、二つのグループに分かれて競ってもらいます! 最終的に、各グループで負けまくったチーム同士で争い、この中で一番おつむの弱いチームを決定します! そしてバカには死んでもらいますので、皆さんどうか、賢く生き延びてください!』


 相変わらず、胸糞悪いナレーションだ。反吐が出る。

 あとカードを配るのは、各グループの試合に参加しないチームのうちの誰か、とのこと。意味わかんねえ。ディーラーくらい用意しとけ。


 ……はあ。文句しか出ないが、文句を言っても始まらない。

 グループの振り分けも運営が行って、俺のチームとサナちゃんのチームは別々となってしまった。別グループとはうまく区切られていて、様子をうかがうことはできないのが、なんかモヤるな……。サナちゃん、無事に勝ってくれればいいが……。


 それに今は、彼女のことばかり心配してる余裕はない。

 いま俺が抱えている問題は三つ。三つもある。それをこのデスゲーム中に解消していかなければならない。マジで、自分のことで手いっぱいだ。むしろ助けてほしいのは俺の方だっての。


「トモコちゃん、一回戦目のディーラー頼む」


「りょーかい。そーろーくん。あ、これ褒め言葉だぜ?」


 頼りになるちっちゃな姉御にまずは面倒事を投げて、待ち時間にまず、頭の中を整理する。三つの問題はどれもが最重要事項だが、その中でも一つ一つの優先順位を精査しなければなるまい。


 まず一つ。ギャルは催眠術が解けているのか否か。

 最初にインディアンポーカーを行ったとき、こいつは、運営が催眠術をかけただろうタイミングでも、俺に何かを伝えようとしていた。そして俺とチームを組むことへの快諾。その後に負ける予定であることを聞いても、平然としていた。

 絶対に何かあるだろ。それを問いただす。


 二つ目は、ヒマワリ先生のこと。

 嵩瀬島ヒマワリ。精神科医。この方もまた、俺が負ける試合をすることを厭わないで、むしろチーム入りを立候補した人物だ。

 俺の求める人材であるとか、意味深なことを述べていたことから、やはり彼女も催眠術を打破した人物なのか……?

 ギャルとヒマワリ先生。運営に気づかれないように、二人同時に催眠術のことを聞ける手段があればいいんだけどな。


 そして三つ目。ヒトミちゃんにかけられた催眠術を、どう解くか。

 催眠術を解く方法は、脳みそがオーバーヒートするほどの感情の高ぶり……。それは激しい怒りだったり……ぶっちゃけ、性的快楽を求めてもいい。

 俺はそれだった。


 ただし、痛みや恐怖といった感情では、催眠術は解けない。最初の乱闘や、『セックスしないと出られない部屋』というワードに泣き叫んでいた女子たちも未だに催眠術下にあることからもわかる。


 まあでも、ヒトミちゃんは簡単そうだ。

 空手家のプライド刺激すればたぶん行けるだろ。雑魚雑魚言ったりして。


 というわけで、さくっとこの問題は終わらせよう。


「ヒトミちゃん、ちょっといいか?」


「ん? なんだ、テルヒコくん」


「いや、なんかさ。ふと、思ったんだけどさ……ちょっと、言いにくいんだけど……」


「なんだなんだ、遠慮なく言ってくれ。僕たちの仲じゃないか」


「ああ、わかった。――お前、最初見たときよりも、太ったよなあ」




「――ああ! テルヒコくんの料理がおいしくて、ついつい食べ過ぎてしまってね! いやあ恥ずかしい!」




 へ?

 ブチギレ……ない!?

 うそだろ!?

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