19:デスゲーム第二回目【インディアンポーカーポーカー】その1
インディアンポーカーとは、よく切られた山札の上からトランプを一枚だけ引き、引いたカードの数字を確認せずに、相手に見えるように、自分のおでこに掲げるところからゲームがスタートする。
つまり、自分のカードが分からないまま、逆に相手のカードが見えている状態になる。
見えている相手のカードよりも、自分のカードの数字が上か下か……心理戦で探りつつ、フェーズ1に移行する。
フェーズ1。カードを交換する。
今回のルールでは、一回だけ、カードの交換が可能だという。必ず交換しなければならないというわけではなく、例えば一番最初に引いたカードが相手よりも強いと思うのなら、交換せずに勝負してもいい。
その場合、いかに相手にカードを交換させないか、が重要になってくるわけだが、それがなかなか難しい。
逆もまたしかり。交換させたいというのに、交換してくれないことだってある。
ギャルがおでこに掲げたカードは、[♡3]だった。
俺は親切心から、カードの交換をギャルに促したわけだが……。
「へへーん、そんな手には乗らないよーだ! あんたのカードもまあまあ強そうだけど、今の発言で確信したわ。私の手は、かなり強いってね! きっと[J]以上はあるわね! 私はこれで勝負よ!」
違うって! 俺がこんなデスゲームを素直に楽しく遊ぶと思ってんのか!?
例えデモンストレーションだと言ってても、負けたら失格にならないとは言ってない! 死ぬ可能性だってあるぞ!?
トランプは[♠][♣][♡][♢]の四種類の絵柄があり、それぞれ1~13まで数字が割り振られている。
インディアンポーカーにおいて、カードを弱い順に並べると、こうなる。
まあ、見た通り、数字が大きくなるほど強く、アルファベットは
……まあ、これはあくまでもインディアンポーカーのルールだ。
実際にやるのは、形はインディアンポーカーだとしても、実際のゲームは通常のポーカーのように五枚一組の役を作って勝負するということだし、どうして今これをやらされているのか、正直なところ、よくわからない。
だからこそ、念には念を入れて、俺が負けるように仕向けようとするところなのだが……!
ギャルのカードは[♡3]だ……!
絶望的に最弱のカード!
それを、変えないって言うんだもの!
バカじゃねえか!?
運営が事前に説明したルールでは、具体的な数字を示す行為は反則とのこと。
だからそれ以外の方法で、ギャルのカードを変えさせないといけないというのだが……!
「変えろよ!」
「やーだよ!」
「俺が言ってんだぞ、バカ! お前に不都合与えるわけねーだろ!」
「はあ? あんた、何? 自分一人だけが正しいとでも思ってるわけ? 自惚れんなっ!」
なっ!? 俺は別に……!
……いや、そう、なのか?
俺ってもしかして、俺以外の女の子たちを、どこか頼りなく思っていたところが、あるのかもしれない……?
確かに、今だって、ギャルに俺の言うことを聞かせようとばかり考えていた。
俺が間違っているかもしれないとは、かけらも考えていなかった。
ギャルのおでこに高々と掲げられた[♡3]は決して強いカードじゃない。むしろ、下から三番目に弱いカードだ。だから俺は必死に交換を迫った。
だが……逆を言えば、下から三番目に弱いというのは、それ以下のあと二つのカードよりは強い。ということに他ならない。
もし俺が、最弱の[A]だった場合を仮定する。
そうだったなら、どう転んでも最悪で引き分けだ。よって、カードを変えるも変えないも意味は限りなく薄い。この場合、変えない理由としても薄いがな。
問題なのは、もし俺が、[2]だった場合だ。
ここからは、変えたら負ける可能性が出てくる。
そしてトランプのカード枚数は54枚。その中から四枚ある[A]を引く確立と、すでに二枚が抜けて52枚から四枚の[A]を引く確立を考えれば、微々たる差だが、カードを変えないという選択は極めて重要な選択になる。
つまり、ギャルの行動を読み取れば、俺のカードは[2]である可能性が高い。
まだ断定はできないが……もう少し、探ってみるか。
「ふーん、じゃあ俺、変えようかなあ?」
「ふぇっ!?」
ギャルの目が少しだけ見開かれて、生唾を飲むようにごくりと喉が動いた。
な、なんだこいつ……!
なんてわかりやすい性格してんだ……っ!?
それ「変えてほしくない」って言ってるようなもんじゃねえか!?
いいんだな? 本当にこれで、いいんだな!?
俺にカードを変更されたらまずい。と思える数字。たぶん[4]以下だろ。
それでいて、俺にカードの変更を促される……俺から見てギャルの数字が低いと言っているにも関わらず変えないということは、高確率で[4]はない。これは勘でしかないが、俺の数字が[4]だったなら、たぶん素直に交換に踏み切ると思う。[4]という数字はギリギリ、なんとなく、交換するラインだと思う。
そして[3]なら、……考える。即答はない。しかしギャルは即答で交換を拒否した。
よし。俺のカードが[2]であるということがほぼ確定だ。
フェーズ2。勝負。
フェーズ1が完了した場合、あとはもう、「せーの!」の掛け声とともに額のカードをオープン!
互いが、この時初めて、自分のカードを確認し、またその瞬間に勝負が決するのだ。
「ギャル。いいか、いくぞ!」
「仕切んなし! はい、いくよ!」
せーのっ!!!
互いの掛け声をハモらせて、テーブルの上にバシっとカードを叩きつけた。
手が震えた。
俺の予想が全くの見当はずれで、ギャルに勝っちゃって、そして失格に追い込んでしまう。そんな最悪な予想が脳裏にずっとへばりついていた。
そして、自分のカードを、初めて確認したとき。
「ふぅ……。やってらんねえよ。まったく……」
ギャルのカードは[♡3]なのに対し……。
俺のカードは[♠2]だった。
読みが当たり、俺は自分の負けを、心底喜んだ。
これを後、何回やりゃいんだ? ただのシンプルなインディアンポーカーでこれだもんな。
次回からは、余計にややこしくなるっていうのに、もうヘトヘトだよ。
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