第14話 音楽
ピーは一人で遊んでいてもずっとぴちゅぴちゅしゃべっている。部屋のラジカセで音楽をかけると、ピーのその声が少し大きくなる。はじめは外から聞こえる音に対抗して大きな声になるのかと思っていた。でも、私が音楽に合わせて歌うと、ピーは遊びを止めて、その間ずっと大声でちゅるちゅる言っている。ああ、これは歌っている。
ピーの好みは静かなものより楽しい歌で、歌いながらリズムに合わせて首を上下に振ったりもする。でも音楽をかける最初の音量が思ったより大きいと、ぴくっと驚いたピーの目が点みたいに小さくなって、その後ぎっと抗議の声をあげた。ともあれ、小鳥はとっても歌が好き、というあの童謡はどうもほんとうらしい。
童謡は、かあさん呼ぶのも歌で呼ぶ、と続くが、ピーは「ピッピッピ!」と大声で呼ぶ。呼ばれてすぐに行かないと自分から飛んでくるか、ぎーぎーその場で怒るかだ。じっと私を見つめるときは黒くて真ん丸なピーの目が、怒ったときには三角になって、明らかに不機嫌な顔になる。
「ピーが『ピッピッピ!』って言うのはあんたの真似よ」母に言われるまで私は忘れていた。ピーがうちに来たころ私はよく「ピー、ピー、ピッピッピ」と歌うように言っていたのだ。確かに必ず「ピッ」を3回言うのが小鳥の鳴き声にしては不自然だけど、ピーの声音が高いので私の声を真似たものとは全く気付かなかった。
ぴちゅぴちゅぎーぎーごにょごにょきゃっきゃっ、聞こえてくる声でピーの今のご機嫌がわかる。みんなで甘やかしたせいで、ちょっとほったらかすだけでぷんぷん怒るピーだけど、近くに行けばすぐに、遊ぼう、と嬉しそうな顔になる。
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