第6話 ピーと父母

 私が呼んだらピーは「ピッピッピ!」と返事をしながら飛んでくるけど、父と母にはそうでもなかった。一人で遊んでいるピーに声をかけても、聞こえてるくせに無視されて、たまにギャッと怒られる。


「お母さんが毎日ごはんをあげてるのよ」「鳥かごのそうじをしているのは俺だ。お前、なんにもしてないくせに」世話らしいことを何もしない私が一番なつかれて、父と母は釈然としない。


 父の頭髪はてっぺんの方が少しさびしく本人はちょっぴり気にしている。だから私の部屋から飛んできたピーが父の頭にひょいっととまると父はうろたえてしまう。とまってもらえて嬉しい、けれど髪の上は困る、乏しい原資は大事にしたい。なのに追い打ちをかけるようにピーは、とまりにくいとでも言いたげに頭の上でじたばたする。

「ピーをどかして」父から助けを求められてピーに指を差し出すが、こんなときに限ってピーはぷいとあっちを向いて頭にしがみつく。

「どくのイヤなんだって」父に言うと、父の顔がちょっと必死になる。


 母が編み物をしていると、ピーはよく棒針と毛糸にじゃれついた。母の手元にとまってかしかし動く棒針の先っぽに噛みついたり、毛糸玉から出ていく毛糸をくちばしでつまむ。母が編む動きに合わせて小さく上下に振れる棒針の上にとまろうとするけど棒針はピーの足がつかむには細過ぎてうまくとまれず、ピーは翼を広げてばたばたがんばる。


「これピー」と言いながらも嫌われたくないから、父も母もピーには怒れない。遊んであげるふりをして、実は父母の方がピーと遊びたい。なにをしても許されて、ピーはどんどんわがままになるのだった。

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