第4話 朝

 横向きに眠る私のまくら側のほっぺたに、ちょんちょんと、ほんの小さなものが触れる。かすかな気配に目を開けると、まくらの上にピーがいて、鼻先から私の目を覗き込んでいる。私を起こそうとしてピーがくちばしで私のほっぺたを触っていたのだ。

「ピー。おはよう」声をかけるとピーは「ピッピッピ!」と大喜びする。早く遊ぼう、とでも言うように。


 眠気に負けてまぶたが落ちてしまうと、ピーはまたほっぺたをそうっとつつく。ちょんちょん。ちょんちょん。ちょんちょん。

 それでも私の目が開かないときは、焦れて怒ったピーが今度は唇にかぷっと嚙みつく。甘噛みではない、普通に痛い。唇の内側のやわらかい部分に、小さな点くらいの血がにじむ。


 これ以上噛みつかれないようにふとんを引っ張り上げて顔を隠す。ピーはいよいよ怒って頭の上辺りをギャーギャー言いながら飛び回る。やっと目が覚めて起きだして見ると、ふとんの私の頭の上だった辺りにはピーのふんがいくつも落ちている。


 毎朝鳥かごにかぶせた暗い色の布を外すのは人間の中では一番早起きの母である。ピーが目覚めても布がかかったままだと、しばらくは鳥かごの中でじたばたしているが、我慢できなくなったら「ピッピッピ!」と叫んで母を呼ぶ。母はあわてて布を取り、ピーは鳥かごから飛び出して、気ままに遊ぶ一日が始まる。

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