第88話 ギガワーム


 来た時は緑がかった毛並みは真っ白になり、隠す気もなくなったフェンリルのガンプはいまブラッシングされてゴロついている。

 まぁ、俺もやる事がなくてゴロついているのだが。

 ルーのとこにでもいってみるか。

「ルナディア行く人」

「アン」

「はい」

「ガンプとリアだけか、二人はどうするんだ?」

 ユフィとルージュは顔を見合わせて、

「日本のほうが面白い」

 あぁ、そうですかい。

「んじゃ行ってくるから留守番頼むぞ」

「「はーい」」

『転移』


「ようルー暇か?」

「暇じゃぞ?あれ?今日は連れも一緒か」

「あぁ、フェンリルのガンプとハーフエルフのリアだ」

「ほうほう、フェンリルとは珍しいのをテイムしたねぇ」

 ルーは立ち上がるとコーヒーを淹れる。

 俺たちは腰掛けてガンプはリアが抱っこしてる。

「またひまになってしまった」

「あんたの暇は潰せないよ?なんならまた三歳児からやり直すかい?」

「それは却下、どこか行ってないとこないか?」

「そりゃいっぱいあるだろ?」

 コーヒーを置いてくれる。ガンプにはミルクだ。

「いや、ルナディアもデカいからどこが良いのかわからんし」

「ならお使いでも頼もうかね。南の砂漠にある砂人族にあるものを届けておくれよ」

「おっ!いいねぇ、お使いクエスト」

「道は簡単だよ。こっから真南に行けばいいだけだからね。でも途中が危ないよ」

「どう危ないんだ?」

 煙草を燻らせ、

「そりゃモンスターがウヨウヨしてるからね。砂漠だから砂に足を取られるし」

「うへー、きつそうだな。で?特級ダンジョンの情報は?」

「ないねぇ、特別指定モンスターならいるよ」

「どんなのだ?」

「なんでも丸呑みにするギガワームってミミズさ。なんでも腹の中にはお宝がいっぱいらしいよ」

「心踊るねぇ」

「そうさねぇ、今のあんたなら倒せるだろうけどそこの二人はここで待ってたら?」

「アン」

「いやです」

 二人ともついてくる気だな。

「私でも相手にしたくないんだけどねぇ」

「黒の魔女が?」

「そりゃ私だって丸呑みはいやさね」

 俺もそれは嫌だな。

「まぁ、合わなければいいだけさね、で、砂人のナグラってのに渡して欲しいんだ」

 小包を受け取る。

「了解!んじゃいくか!」

「アン」

「はい」


「死ぬんじゃないよー」

「縁起悪いな」

 ルーの家を出て南へ進む。


 まだ見渡す限り森の中だ。

「リアも無理して付き合わなくてもいいんだぜ?」

「いえ、小太郎様の行くところが私の行くところですから」

「そっかぁ、ガンプは?」

「アンアン(面白そうだから)」

「そっすか」

 森の中を半日ほど歩いていくと、一面の砂漠が見えてくる。

「うへぇ、暑そうだな」

「そうですね、水分補給はこまめにしていかないと」

「アンアン」


 砂漠を真っ直ぐ突っ切る。と言ってもなにもないから腕時計の方位磁針が目安だ。


 もう直ぐ日暮れ、近くの岩場にテントを張る。

「リアも寝てなさい」

「嫌です。小太郎様が寝るなら寝ます」

 まぁ、夜番は慣れたもんだからテントの中でするか。

 テントの中ではガンプがへそ天で寝ていた。わしゃわしゃとさすると「クゥー」となく。寝袋に入ろうとするとリアも入ってこようとする。

「リア、一人用だぞ?」

「この密着度が」

「いや無理だから一人で寝なさい」

「……」

 寝袋から体半分出して俺に抱きついて眠る。どうしてこうなる?

 結局夜は何も起きず、ただ寒くて毛布を出して三人で集まって眠った。


 次の日は快晴。って雨降るのか?

 テントをアイテムボックスにしまい、朝飯を食べてから南に進路をとる。

 バギーとかあればよかったな。

 今度来る時は買っておこう。


「何が来ます!」

「分かってる!」

「アンアン!」

 それはビルほどデカいギガワームだ。

「うおぉぉぉおぉぉぉ!」

「きゃああぁぁぁぁぁ!」



 と、食べられたわけだが、どうしようかな。

「アンアン」

「あぁ、さほど臭くはないな」

「コレはどう言う事でしょうか?」

 中は広く空洞になっている。

「さて、探検でもしてみようかね」

 中に進んでいくと船の残骸が山になっている。船の残骸を調べると魔法玉やスクロールなんかも出て来てアイテムボックスに入れていく。

「宝の山ってのも案外当たりだな」

「ここから出られるんでしょうか?」

「いざとなったら転移があるしな」

「アンアン」


 にしても多いな。全部アイテムボックスに収納して行ってみるか!

 船の残骸をどんどんアイテムボックスにいれていく。砂だけになった空洞はまだ奥があるので奥に入っていく。

 中に入っていくといくつかの宝箱も出て来た。どれも金貨や白金貨ばかりだった。

 なんかアイテムを期待していたんだがな。


 もっと奥には金で出来た仏像のようなものや何かの鉱石なんかがたくさん積まれている。全部アイテムボックスだ。

 何時間いるだろうか。

 外は夜になっているだろうからこいつも寝ているのか?まぁまだ沢山の鉱石が残っているから全部取り切ってやるけどな。


「とりあえず取りきったかな?」

「はい。それにしても大空洞ですね」

「アンアン」

「此処で大暴れしてもいいけど可哀想だから転移でキャンプしたところに戻るか」

「そうですね」

『転移』


 またキャンプをして、夜を明かす。

 翌朝南に向けて出発した俺らはサンドフォックスやデザウルフなんかと戦いながらやっと砂人の街までやってきた。

 

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