第87話 ガンプ


「次は私の鎧ね」

「そうだな、じゃあいくよ」

『転移』


「やっと取りに来れました」

「お待ちしておりました」

「おぉ。これが私の鎧か」

 赤竜の皮鎧だがしっかり作り込んであるのと他の爪や素材をふんだんに使ってあるのがよくわかる。

「俺はコレでいいや」

 黒の革鎧だ。

「コタローも作って貰えばいいじゃない」

「そだな、じゃあ、これで」

「ぶふー!」

「だめかな?」

 俺が持ち込んだのはブラックオーガの皮と爪と牙。

「い、いいえ。こんな素材は初めてでして、職人魂が燃え上がります」

 良かった作ってもらえないのかと思った。

「また三、四週間でお願いできますか?」

「はい!お任せください」

 サイズを測ってもらい、革鎧とルージュの革鎧の値段も払う。

「ルージュかっこいいな」

「ユフィも作ってもらうか?」

「コレがダメになってからでいいや」

「そっか」

 まぁべつに悪いものでもないしな。

 

「んじゃ中級ダンジョンあたりでいいか」

 自由国家の北西の森にある中級ダンジョン。

 中級ダンジョン 三階層

「はっ!ふっ!」

 ルージュの槍がクレイマンに突き刺さるとクレイマンが干からびる。

「やるなぁ」

「これくらい楽勝よ」

 前衛二人に後衛二人でパーティーとしてはいいんじゃないか?

 中級をドンドン進んでいき、三十階層で一旦終了した。


「あまりにも楽勝すぎたかな」

「そうね、上級か特級あたりがいいんじゃない?」

「そうだね、でも上級にいこうか。怪我でもされたら心臓に悪いよ」

「心配性ね」

「じゃあ明日は上級ダンジョンな」

 明日はリアと攻略したダンジョンだ。


「よし、何しようか?」

「えー、服もご飯も日本のほうがいいですし」

「なら日本にないものは?」

「魔法屋に武器、防具屋、ギルド」

「あと道具屋にモンスター屋」

「なに!モンスター屋ってなに!」

「テイムできるモンスターを売ってるところです」

 テイム持ってる!モンスター!

「いこう!すぐ行こう!」


「ここですよ」

「ワクワクが止まんねーぜ」

「あんまり期待しないほうがいいよ?」

 ペットショップみたいなもんだろ?

 入ってみると獣臭さに鼻を摘む。

「くっさ」

 いるのはゴリラみたいなのやらワニみたいなやつ。

「何かお探しですか?」

「いやいいや」

「クゥー」

「ん?」

 鳴き声がした方を見ると痩せ細った狼?

「あ、それはフォレストウルフの子供なんですが売れないからもう処分どきですね」

「クゥー」

「もらう。それもらうよ」

「「「えっ!」」」

「毎度あり、良かったなお前」

 フォレストウルフをテイムし、代金を払う。

 抱き抱えると思ったより軽く、まだ子供なのがわかる。

「まずは風呂だな」


 家に帰り風呂に入れる。洗ってやると赤錆のような汚れが出て来て、毛の色が白くなっていく。風呂が気に入ったらしくゆっくり浸かってる。

「おまえは親父か!」

「クゥー」

 風呂から出て乾かしてやるとだいぶ見れるようになったがまだ細いな。

 肉を細かくして食べさせる。

 ガツガツと食って満足したのかへそ天で撫でて欲しそうなので撫でてやる。

「かわいい」

「ですよねー」

 ようやくモフモフになったフォレストウルフを見て三人は癒やされている。

 体調は五十センチほどか、もっと喰わせなければな。

 しかし、もう寝てるし警戒心ゼロだな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

フォレストウルフ(偽装)

 レベル2 オス0.5歳

 スキル 偽装 念話

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 で、お前は結局なんなんだ?


 フォレストウルフにはガンプと名付けた。

 フォレストウルフかは分からんけど。

「ガンプぅー」

「アンアン」

 いまじゃうちのマスコットだ。

 爺婆ズが足腰の鍛錬だと抜かしながら散歩に行く。大人数で。

「いやー、ガンプはお利口さんじゃのぉ」

「誰かと違ってのぉ」

「誰のことだぁ?」

「アンアン」

「ほれ、ガンプもわかっておるぞ」

 クソっ!本当に爺婆ズは来るもの来るもの可愛がりやがって!


「さーて、風呂でも入るか!」

「アン!」

「あー、ガンプぅ」

「風呂は俺と言ってがいいってよ!」

 ここは俺の勝ちだ!

 わしゃわしゃと洗ってやって、風呂に一緒に浸かる。

「ふぃー」

「わふぃー」

 いい気持ちだ。

「ガンプはなにもんだ?フォレストウルフじゃないだろ?」

「アン、アンアン(僕はファンリルだよ)」「はぁ、そんなこったろうと思ったよ」

「アン(まぁいいじゃん)」

「まぁいいけどな」

 念話ができるフォレストウルフなんて聞いたことがねぇ。

 あの時も助けてって言って来たしな。


「クゥー!風呂上がりのビールは格別だな」

「アンアンアンアン(ぼくにもくれよ)」

「あ?少しだけだぞ?」

「クゥー!(苦い)」

「だろうな!あははは」

 ガンプを乾かしながら飲むビール。ガンプには苦かったようだ。


 自由国家南側、上級ダンジョン

「んじゃ。ガンプはついてくるだけな!」

「アンアン」

「ルージュと俺が前衛ユフィとリアが後衛な」

「「はい」」

「んじゃ行くぜ!」

 駆け足で攻略していく浅層部分は素早く敵を駆逐していく。

 四人と一匹でがんがん進んでいき五十階層のクイーンビーまでやって来た。

「ユフィ、リアよろしく!」

「「はい」」

 遠距離で仕留めてくれたほうが助かるからな。こっちに向かってくるのだけ蹴散らす。

 ドロップ品のハチミツはユフィ達に取られてしまった。


 八十階層、ワークロコダイル、これは俺たちの獲物だ。「ルージュ!」「了解」槍で牽制してるところを首チョンパして終了。

  

 百階層のブルードラゴンは全員で攻撃したら速攻で倒れた。俺たちが強すぎる。

「アンアン」

 ガンプも怖がらずによくついて来たな。

「宝箱でてるよ」

「んー、上級のままにしておこう」

 転移陣に乗って外に出る。地響きも起きないから大丈夫だろう。


 にしても上級でも四人だと早いな。一日かかってないぞ、ほんと過剰戦力だな。

 特級もこの前潰したばっかりだし、ダンジョンはちょっとお休みかな。


 日本に戻った俺たちは家に帰ってきた。

「スマホが欲しい」

「あ、私も」

「私も欲しいです」

 三人娘のためにスマホを契約しに行く。俺のと違って最新機種だ。

 まぁこれも必要だろう。

俺より使いこなしてるのはリア、さすが年の功……そんな目で見るなよ。あとの二人は爺婆ズに教えてもらってる。

「もしもーし」

「用がないならかけてこない!」

 すぐそこにいるのにかけて来てどうするんだ。

「アンアン(念話でいいのにね)」

「まったくだ」


“プルルルル”

「こんどはルージュか?」

「あ、加藤だが」

「加藤さん、お疲れ様です」


 加藤さんからの連絡で主要七カ国に渡すことになったらしい。日本を抜いて六カ国に聖玉が渡される。

 

「それじゃあお願いしますね」

「お預かりします」

 一応は日本から貸し出しと言うことになるらしい。

「さぁ、これでやることやったし」

「やったし?」

「日本にある特級ダンジョンって何処にありますか?」

「ふぁ?それは俺も初耳だが?」

「なんだ、やっぱりないのかな」

「特級と言うことは上級の上ってことだよな」

 加藤さんは冷や汗をかいてる。

「大丈夫ですよ。いまの冒険者や自衛隊が力をつければ」

「あ、あぁ。上があることが知れてすこし心構えができたかな」

「いま中級ダンジョンでしたっけ?」

「あぁ。中級ダンジョンも攻略したぞ」

「おぉ!それは良かった」

「うむ。次も中級ダンジョンを攻略してから上級ダンジョンに挑むつもりだ」


「頑張ってくださいね!」

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