第83話 エリクサー


「少しは宜しいですか?」

 ミーサさんに止められる。


 客間に足を運んで対面で座ると、紅茶を出してくれる。

「で?どのようなご用件で?」

「まだ出していないモンスターの素材もあるでしょう?そのなかに竜の逆鱗はないでしょうか?」

「ん?あぁ、ありますけど」

「それを売ってはいただけないでしょうか?」

「んー、なぜですか?」

「それは……薬になるからです。私の父が病で倒れてまして」

「なら売りますよ。どうぞ」

 竜の逆鱗を机の上に出す。

「い、いいんですか?」

「はい、別に持っていても錬金素材にしようと思っただけですから」

「錬金術もお使いになられるんですか?」

「スクロールや魔法玉を作るくらいですけどね」

「そんな高等技術を……あの不躾でもうしわけありませんが、薬の製作もお願いしたいです」

「お、俺にですか?俺にはできるか分かりませんよ?」

 ミーサさんは体を乗り出して、

「道具や精製方法はこちらで用意しますのでどうかよろしくお願いします」

「うーん。まぁ、やれるだけはやりますよ」

 頼まれてしまった。


「こちらが薬学室です。精製方法はこちらになります」

「うわっ!結構めんどくさいですね」

「申し訳ありませんがお嬢様のお願いを聞いてくださりありがとうございます」

「いや、やるって言っただけで成功するとは限りませんよ?」

「それでもです。旦那様もこれでダメなら」

「あーもう!頑張らせていただきます!」


 それから三日繊細な作業を黙々とこなし、最後に逆鱗を粉状にしたものを混ぜる。

 すると光り輝く薬品に変わる。すぐに蓋をして爺やさんとミーサさんを呼んでもらう。

「これで一応完成ですが、どうでしょうか?」

「光り輝いていますね。これがエリクサー」

「え、エリクサー?」

「そうでございます。伝説のエリクサーだと確信しています」

 エリクサー持ってたな。

「すぐに旦那様へ」

「ありがとうございます」

「はい、早く行ってあげてください」

 はぁ、気が抜けた。あれがダメなら俺が持ってるエリクサーをあげればいいや。

 てかつくれるんだなエリクサー。もう二度と作りたくないけど。

 備え付けのベットで眠りにつく。


「ん?見たことない天井だ」

「目が覚められましたか?」

 メイドさんがこちらを見ている。

「はい。ここは?」

「ここは客室でございます。倒れるように眠られたのでこちらに運ばさせていただきました」

「あぁ、ありがとうございます。あ、で、どうでしたか?」

「はい!薬は大成功でございまして大旦那様もすこぶる元気になりました。ありがとうございます」

「良かったぁ!」

 布団の中でガッツポーズを決める。


 そのあと少し軽食をいただき、ミーサさん達との会談があった。

「私がミーサの父である。カイサルでございます。今回は本当に助かりました。ありがとうございます」

 カイサルさんはびっくりするほど大きな体で商人とは思えないほどだ。

「こちらが逆鱗の代金と薬の精製の代金になります」

 爺やさんが持って来た大袋がデカすぎてビックリしていると。

「本当なら財産全てを渡したいくらいですが私どもも下の者を食べさせていかなければいけないのでこれでご勘弁を」

「いや、貰いすぎですよ!」

「いや、これは相応の対価になりますのでどうぞ」

「わ、分かりました」

 アイテムボックスに入れる。

「なに、心配は入りません。こらからまた私が稼いで見せますから!」

 カイサルさんは力瘤を作りニカッと笑う。

「こちらこそ良い経験になりました。ありがとうございます」

 大きな手と握手してカイサルさんの屋敷を後にする。


 思わぬ大金が入ってしまったな。


 大金を手にした俺は魔法玉とスクロールを買い漁った。それでも手に余るほどの大金だ。

「これをまた自衛隊に売ったら大金になるんだよなぁ」

 あ、ポーションなんかもいるのかな?買っとくか。

 道具屋でブランクスクロールと魔法玉、あとポーションなんかを大人買いしてしまう。


 竜の血も売っていたので買っておく、自分の血を使っていると貧血になるからな。


 あとはレベルでもあげるかな?

 ここからだと上級ダンジョンがあったよな。出来れば特級が良かったんだが、聞いてみるか?

 ギルドを探すよりカイサルさんに聞いてみようか。

 またカイサル邸に来た俺は客間に通される。

「すいませんまた来てしまいました」

「いいですよ、どうしました?」

「ここら辺で特級ダンジョンはありますか?」

「……ここら辺で特級ダンジョンというとゴーストばかりのダンジョンになりますよ?」

「それなら聖魔法が使えるので大丈夫かと」

「なら大丈夫だと思いますが、無理だと思ったらすぐに撤退してくださいね」

「はい、わかりました」

「場所は……」

「ありがとうございます」

「ドロップ品はうちの商会によろしく」

「あはは、はい」


 場所を教えてもらったのは街の中にある廃墟の教会だった。こんなところに特級があるなんて大丈夫なんだろうか?

「まぁ。いってみますか!」

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