第81話 間話 それぞれ
こちらは自衛隊、ダンジョン対策課、加藤である。
「前衛飛び出しすぎるな!」
「後衛は邪魔にならないようにな!」
「了解です!」
ここは青森にある初級ダンジョンだ。
「よゆうっすね」
「何が起こるかわからないから注意だけはしとけよ」
スクロールと魔法玉を使ったダンジョン特化のエキスパート達だ。
現在十九階層。つぎはボスと呼ばれるモンスターが待っている。
門を開けるとそこには大きな猿がこちらを威嚇していた。
「後衛撃てぇ」
『ファイヤーボール』『ウォーターカッター』『サンダーボール』
前衛が動くことなく猿はたおれて消えていった。
初級ダンジョンでは過剰戦力か?
いや、これくらい安全にいかなければ中級、上級と攻略できないからな。
にしても、これも魔法玉とスクロールがあるから攻略出来るわけで魔生石も手に入る。
上が躍起になるわけだな。
「怪我人居るか?」
「いません」
「では小休止後、つぎの階層に移動する」
そのあとも快進撃を続ける自衛隊チームは三十階層へ足を踏み入れた。
グリーンゴブリンキング……森の中で生まれ、体格に恵まれたゴブリンの長、ほかのグリーンゴブリンを指揮する。
「まずは周りを殲滅!次に真ん中のデカいゴブリンを倒すぞ」
周りのゴブリンは五十程、いまの自衛隊の敵ではない。
「魔法を撃ってくるゴブリンがいます」
「後衛のゴブリンを先に殲滅しろ」
少数の怪我人が出たもののグリーンゴブリンキングは討たれた。
「よし、あとは退却だ。転移陣で帰るぞ」
加藤はこのダンジョンを初級だと思ってたがそれより下の超初級だとは知らない。
こちらはマリアと三原さん達のチーム。
中級ダンジョンに入ってようやくでてきたところだ。
「いやぁ、結構苦戦しましたね」
「あれくらいは苦戦にはいらないわ!もっと強いのが沢山いるのよ」
マリアは小太郎とのダンジョンを思い出して身震いする。
「でもこのチームならいつかは上級に」
「まだまだね。もっと安全に攻略出来るようにならないと」
「中級と上級はそんなに違うんですか?」
「中級は五十階層まで、上級になると倍になるわ」
「うわっ、攻略だけで時間がかかりそうだ」
「小太郎は一日で行ってたけどね」
「そりゃ小太郎さんですもの」
「たしかに」
「さあ、売るもの売って資金を作るわよ」
「はぁーい!」
マリアはなんだかんだで面倒見が良く、リーダーに適任だった。
売ったお金はチーム費を抜いたら山分けだ。そして売値が初級よりぐんと上がって三百万程になった。
「これで最新の防具が買えるぞ!」
「そういえばマリアさんの防具はかわってますよね?」
「これは赤竜の皮を使った特注品よ!」
「「うわぁー」」
みんなの視線を釘付けにしたマリアはさも自分の手柄のように見せつけるのであった。
そして、こちらは勇者組。
「おい、大谷!三原達は俺たちより先に行ってるって本当かよ?」
「本当だ。俺たちが浮かれてる間にしっかり地に足つけてやっていたらしい」
「ララはべつにチヤホヤされてないし」
「あぁ、俺がチヤホヤされて浮かれてたからだ。本当にすまないと思ってる」
勇者大谷は悔しそうに唇を噛む。
「これからだ。勇者の称号を持つ俺が、いや俺たちが、ダンジョンを攻略していくんだ」
まずは初級ダンジョン。ここを攻略できないと次に進めない。
「前衛は守り切るぞ!後衛はララ達頼むぞ」
前衛は四人、勇者の俺と戦士の川田と槍士の青木、盾士の戌井。後衛は弓師のララ、魔術師の池田、回復術師の狩野、付与術師の田中、
「おう!」
「はーい」
勇者達は少しづつだが力をつけて行く。
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