第67話 魅了


 家に帰るとファッションショーが始まっていた?なんで?

「お、いいところに帰ってきた。どうこれ?」

「か、可愛いです」

「やったぁー!」

「コタロー、こっちは?」

「大人っぽい?」

「いやっほー!」

「で?なにしてるの?」

 服が散乱している。

「ん?俺とルージュって体格似てるから服をあげようと思って色々試してみてた」

「あぁ、服くらいかってやるよ」

「ほんとか?やっぱ彼氏だからか!」

「な!言った通り買ってくれるだろ?」

 二人してなんか変な踊りを踊ってるな。


 二人の服を買いに行く。

 デパートだな。タクシーを呼んで乗り込む。丸バツデパートまで。

「メーターいれますね」

 タクシーの中はいい感じに臭い。この匂いが嫌いだ。

「はやいな!電車ほどじゃないけど」

「な!な!日本ってたのしいよな」

 新しい友達ができたみたいだな。


 なんだ?俺また呪いでもかけられたか?違うか、ただのネガティブだな。

「なぁコタロー!チュー」

「うおっ!いきなりなにすんだよ!」

「なんかしたくなったから!」

「こんならタクシーの中とかでしないの!」

「はぁーい!」

「俺はしてないぞ?」


 さてデパートについて、服を選びに出た二人を眺める。さぁ。なんでこんなにネガティブになったんだ?


 あぁ。やることやって、ある程度終わったから喪失感かな?

 こんなセンチメンタルな俺ってカッコ悪い。ステータスは高いんだからなんでもできるのにな。

 

 これが終わったらルナディアでダンジョンにでも潜ろう。極ダンジョンがいいなぁ。

「これ似合う?」

「おう!可愛いぞ!」

「えへへ!」

「ほら店員が待ってるから行ってこい」

「あーい」

 こんなに幸せなのになー。


「買った買った!」

「俺がな!」

「えへへ」

「こんどこれ着てデートしてな」

「俺はその次にデートな!」

「はいはい」

 そっか、年が引っ張られてるのかな?いまが十八だから、三十七歳かよ。アラフォーだな。

「今日は爺婆ズのとこに行かないのか?」

「今日も行くのか?」

「寂しがり屋ばっかりだからね」

「なんだその爺婆ズって?」

「ルージュも行けば分かるよ」

「あぁ、二人で行ってみたらいい」

「コタローは?」

「俺は、そうだな、いってみるかな」

 気が紛れるだろ。


「じゃーん!ユフィちゃん登場」

「あらユフィちゃん。相変わらず可愛いねぇ」

「ユフィちゃんじゃ!ってなんじゃこの子は?えらいめんこいのぉ」

「ルージュっていうんだ」

「ルージュ、です」

「かぁ。また小太郎の毒牙にかかったか!このすけこましが」

「だれがすけこましだ!それより二人を預かってくれ」

「なんじゃ?どっかいくのか?」

「あぁ。ちょっと用事があってな」

「そっか!行ってこい!ユフィちゃんとルージュちゃんはワシらと遊ぼう」

「甘い物が、あるよー」

「やったぁー」

「じゃ、よろしくな」

 俺はルナディアに行った。


 上級キーマダンジョン、ランクアップ。

 特級キーマダンジョン、ランクアップ。

 極ダンジョン。


「はい、これでよし!さて、これからが大変だな」

 俺は笑っている。

 瞬歩で走り回り天歩で空中を駆け巡る。

 アスカロンとクラウソラスを振り回し、血まみれになりながら極ダンジョンを攻略していく。

 二百階層、

 意外と早かったなぁ。

 黒くてグチャグチャのスライム。

 エンペラースライム……スライムの最上位。なんでも食べ消化する。

 核がどこにあるかもわかんないから、取り敢えず斬りまくるか!

“ザンザンザンッ!”

“ジュッジュッジュッ”

 あれ、剣が持たないかも。んじゃ素手でいくか!アイテムボックスにしまって、素手でスライムと格闘する。


 服はすでに溶けてしまい、肉や骨も回復でなんとかなっている。

「見つけた!」

『ギィヤオォォォォォォォ!』

 核を潰して終わった。

「はあ、この高揚感がクセになるのかな?」

 ドロップ品と宝箱を取って、外に出る。

 めんどくさいのはいやだからサッサと転移してルーの元へ行く。


「あんた何やってんの?」

「ん?着替えてる」

「いや、血だらけで帰って来て無言で洗って服に着替えて。なんか言うことないわけ?」

「あ、極ダンジョンまた一つ攻略したよ」

「は?はぁ、魅せられちゃったわけね」

「いやいや、極ダンジョン攻略したら無くなるんだしいいことだろ?」


「今度は青の魔女かよ。なんどお世話になるんだろうか」

「へ?あれ?」

「あんたは今危ないから時間を止めたよ」

「……」

「さて、青の魔女がすんなり治してくれるといいけどね」



 青の魔女の城、名前どおりの青い城ではなく、普通のグレーの少し小さい城だ。

「ミスティアいるかい?」

「いるわよー」

「はいるよ、よいしょっと」

「あら弟子まで連れて来たのかい?」

「ちよっと頼みたいことがあってね」

 俺ははそこら辺に捨てられている。

「こいつが魅了にかかったるんだよ、てかこの前は呪いで、こんどは魅了だ。その辺の耐性もつけとくれよ」

「ただじゃねぇ?」

「何が欲しいんだい?」

 ミスティアは少し考えてから、

「この子の記憶でどおだい?」

「見るだけならいいんじゃないかい?」

「ならオッケー!」

 俺の意見は?

「あら、この子意識があるのね」

「あぁ。身体の時間を止めただけだからねぇ」

「ならよく見れそうだね」

「じゃあお願いね」

「任せといて」



 走馬灯のように流れる俺の記憶。

赤ん坊の記憶から初めて買ったゲーム、父の目を盗んで見たエロ本や、恥ずかしい記憶が山のように流れていく。

「もうやめてくれ!」と叫びたいが叫べずにその記憶はドンドン流れていく。忘れていたこともあった。


 青の魔女はスッキリした顔をしてそれから俺に何かを施している。

「終わったわよ」

「あら、意外と早かったわね」

「ちょっと日本のことが知れて楽しかったわ」

「へぇ、行きたいなら連れていくわよ?」

「やめとくわ。私はここで海よりも深く空よりも高い知識のなかが好きなのよ」

「そう。じゃあお邪魔したわね」

「また魔女会談で会いましょう」

「またね」


 ルーに連れられて俺は恥ずかしさと情けなさと心弱さに泣きまくった。

 家に着いた頃にはグチャグチャの顔を拭かれ、ようやく魔法を解いてもらう。

「らめら。俺は人間を辞めたくなった」

「ちょっといままでの人生を振り返っただけでしょうに」

「ルーに何が分かるってんだ!おれは最低な人間だ」

「落ち込むのも勝手だけど、耐性ついてるからすぐ持ち直すわよ?」

「へ?」


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コタロー・カザマ 十八歳

 時渡人

 レベル381

 力 GS++

 体 GS+

 速 GS++

 魔 GS++

 運 GS-

スキル 五行魔法(火・水・土・風・雷)        

    闇魔法 光魔法 聖魔法 回復魔法 転移魔法 時空間魔法 鑑定魔法 強化魔法 支援魔法 付与魔術 錬金術 毒魔法 影魔法

     剣術 槍術 棍術 体術 盾術 感知 天歩 剛断 瞬歩 早駆け 剛弓 斧術 疾風 集中 念話 鉄塊 手当て 俊足  剛力 蹴足 

ユニーク 限界突破 全耐性


 黒の魔女の弟子

 巻き込まれし者

 極めし者

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 なんだよこれ?ユニークに全耐性って、なにこれ?

「あんたは呪いやら魅了やらに罹りやすいみたいだから耐性をつけたもらったのよ。ありがたく思いなさい」

「俺は魅了されてたのか?」

「そうよ、ダンジョンにね」

「なんだよそれ、魅了ってダンジョンがするものなのかよ」

「ひとは少なかれ惹かれるものがあるから動くのよ?それがあんたの場合強く魅了されてたの」

「はぁ、まぁすこしは自覚があるからな」


「少しは感謝してよね」

「ちょー感謝してます!」

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