第64話 フェイズ


“コンコン”

「はーい」

「おちゃ淹れたよー」

「おう!ありがとう」

 書斎でスクロールを作成しているとユフィがお茶を入れて来てくれた。

「またスクロール?お願いされたの?」

「いや、先に作っとかないとさ、言われた時に出せないしね」

 あまり大量につくってもしょうがないんだが、持ってても売れるからな。

 たまにはユフィをつれてルナディアにでもいこうかな。

「ユフィ?ルナディアだとどこに行きたい?」

「うーん。ポケットさんとかまた会いたいかも」

「あー、ポケットさんだとアルスタットか、いいな」

 アルスタットまで転移する。


「こっちだよ。ポケットさんの商会は」

「さすがユフィは覚えてるな」

「まあね、ここに住んでたから」

 ポケットさんを尋ねるとすぐに会えるようだ。

「おひさしぶりです」

「こちらこそおひさしぶりですね」

「ひさしぶり!」

「もしかしてユフィか?見違えたな」

「だろ?俺もコタローの彼女だからな」

「へぇ、ほぉ」

「あははは、それより商いはどうですか?」

「ぼちぼちやってますよ」

「魔法玉やスクロールで珍しいものがあれば買いますけど」

 ポケットさんは少し考えて、

「スクロールなら少しありますね」

 と、奥に行って帰って来た。

「念話、鉄塊、くらいですかね」

「それじゃあそれを貰いますよ」

「売れ残りですので十万でいいですよ」


 その二つを買ってポケットさんと雑談などをし別れる。


「聖教国にも行ってみようか?」

「あ、どうなったか気になるね」

 聖教国前に飛んでみると、立派な塀が作ってあった。

「すげぇ。まだそんなに時間経ってないぞ?」

「そうかな?時間差があるからかもよ?」

 いや、それにしても早いな。

 中に入ってみると人間と魔族が混在していて活気もある。これまで争っていたのが嘘のようだ。

「これまたビックリだな」

「ほんと、魔族がいるなんてね」

「ビックリしたでしょ?」

「うわっ!っと、ルージュか、ビックリさせ過ぎだよ」

 なんで俺たちが分かったんだ?

「うちの偵察隊がコタローを見たって言って来たから飛んできちゃった!」

「あはは、元気になってなによりだよ」

「ゔぅぅぅ」

「ユフィも相変わらずね、コタローはあたしに会いに来てくれたのよね?」

「あはは。もちろん、ついでに街がどうなっているかも気になってね」

「嘘つき」

 ユフィが小さな声で喋り、つねって来る。

「あははは、それでこれはどう言うこと?魔族と人間が一緒に生活してるの?」

 ルージュは胸を張って、

「そうよ!ここは他種族国家になったの、魔族だって普通の人間と変わらないのよ?」

「そうなのか、へぇ、ほんとに上手く行ってるんだな」

 そこには人間と魔族の垣根なんか最初からなかったかのような場面があちらこちらで見られる。


「お城も大きいわよ」

「あぁ。ここからでもわかるくらいデカいな」

 奥には真っ白な城が聳えたっている。

「そうだ、案内してくれよ」

「いいわよ、どこに行きたいの?」

「まずは魔法屋かな?」

「こっちよ!」

 あれだけの傷を負っていたとは思えないな。

「ここよ!」

「でっかいな!」

「魔族は魔法が得意だからね。魔法屋はよく使われてるわ」

「ここなら色々ありそうだな」


 ルージュを先頭に中に入っていく。

「これはルージュ様、お連れの方もいらっしゃいませ」

「こっちが客よ。色々相談に乗ってあげて」

「はい、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

 恭しく頭を下げるのは魔族の男。


「なにか珍しいものとかないかな?一通りみてみたいんだけど」

「それではこちらに」

 案内されたのは魔法玉が並んでいる場所だった。綺麗に陳列されていて宝石のようだ。

「こちらなんかは珍しい毒、影、の魔法玉になります」

 ゼルが使えるようで安心した。

「じゃあその二つを、あとスクロールも見たいんだが」

「こちらにございます」

 やはり綺麗に陳列されていて、どれがどのスキルなのかがよくわかる。

 さすがにもうリセットはいらないな。あとは手当て、俊足、剛力、蹴足、を買う。

「また寄らせてもらうよ」

「はい、お待ちしております」


「次はどこいく?」

「そうだな、どこか美味い店はないか?」

「そうねー、分かったわ!」


 高級そうな店に連れてこられた。

「ここが今一番人気の店よ」

 中に入って個室に案内される。

 ルージュが人数分頼んで雑談していると、

「お待たせしました」

 と、持って来たのはハンバーガー!?

「これってハンバーガー?」

「そうよ?しってたの?」

「もしかしてここって」

「フェイズさんの店?」

「当たり!さすがフェイズ、有名なのね」

 すると奥から出て来たのは、

「久しぶりですね二人とも」

「やっぱりフェイズさんだ」

「久しぶり!ビックリしたよ」

「え?知り合いだったの?」

 ルージュはビックリしている。

「ハンバーガーを教えてくれたのはこの二人ですからね」

「えー!」

「ここまでにしたのはフェイズさんですよ」

「そうだよ、フェイズさんすごいぜ」


 ビックリしたけど会えてよかった。

「ハンバーガーいただきます」

「いただきます」

「美味い!凄い美味いですよ」

「やった!頑張った甲斐がありました」

 フェイズさんが手放しで喜んでいる。

「ねぇ、なんでフェイズと知り合いな訳?」

 ルージュに説明しながら、美味しくハンバーガーを食べる。

「美味しかったよ。またくるね」

「はい!まってますね」

「バイバーイ!またね」

 

 こうやって知り合いに会うとうれしくなる。

 なお、ルージュはご機嫌斜めだ。

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