第60話 錬金術


 福田さんには悪いがギルマスに会う気にはなれない。

 ちょっと離れた豊田ギルドまでやってきた。ここは上級ダンジョンがあるらしい。

「小太郎様ですね。ダンジョンに入れるわけにはいかなくなりまして」

「は?」

「通達がありまして小太郎様をダンジョンに入れるなと」

「それはギルドの総意ととってよろしいでしょうか?」

「それはわたしにも分かりかねます」

「分かりました。今後一切日本のダンジョンには関係しませんので」

「そうですか。わかりました、そのように伝えさせていただきます」


 そっちがその気なら徹底的にやらかしてやる。

「わはははは、あの小僧は豊田ギルドで門前払いをくらったらしいぞ!こっちに泣きついてくるのも時間の問題だろ?」

「そうは思いませんけどね」

「なぜだ?」

「小太郎様はスクロールを手に入れる方法を知っています。魔法玉も同様ですね」

「ダンジョンではないということか?」

「そう言うこともあり得ると言うことです」

「まずい、まずいぞ」

「もう、後の祭りです」

「お前はあの小僧に連絡しろ」

「とっくに連絡しましたが、出てくれませんでしたよ」

 本当は出てくれていたが、福田は小太郎の味方だ。

「これではスクロールが手に入らんではないか!あぁ!どうすれば!」


 その頃、部屋であやしげな実験をする小太郎。錬金術の練習だ。

 これで初級ポーションか。一回作ると次からはポンポン生み出せるのは良いな。

 いまはポーション類の作成をしているところだ。

「次はスクロールだな。あ、材料買いに行かないと」

 

 転移でアルスタットの道具屋へ、ブランクのスクロールをありったけ買って、また家に戻る。

「へへっ、なんか悪い事してる気分!」

 スクロールには自分が所持しているスキルしか写せない。俺が今所持しているのは、


剣術 槍術 棍術 体術 盾術 感知 天歩 剛断 瞬歩


 こんだけあれば良いだろ。まずは剣術辺りから試してみるか。

 ブランクのスクロールに自分の血を垂らし、魔力で剣術を込めるように意識する。

 スクロールが少しだけ光り完成する。


 へぇ。これでできるなら量産出来そうだな。


 適当にスクロールを作ってアイテムボックスに突っ込む。あ、どれがどれかはシールを貼ってある。


 さて、福田さんから電話があったから電話してみるか。


「もしもしー」

「あ、小太郎様。大丈夫ですか?」

「こっちは大丈夫だよ。そっちは?」

「はい、ギルマスが情緒不安定でして、大変ですね」

「やっぱりねー、だって俺に喧嘩しかけてきたんだからさ。いっそ福田さんがギルマスやったよ」

「えぇー、私は今の立ち位置で十分ですよ」

「だよねー、だからギルマスって最悪なやつしかやらないのかな?」

「さぁ?それは同意いたしかねますが」


「あ、スクロールは分かったけど、魔法玉はどうなったの?」

「あれはギルマスが持っていってしまって」

「あんのやろう!やっぱ今から行くわ」


「小太郎様」

「あー、福田さんはそこら辺で隠れてて」

「は、はい」

「ギルマスはどこかなー?」

 俺はマスター室を見つけるとドアを蹴破る。

「はい、みっけ!」

「ひいぃぃ!」

「ギルマス?俺の渡した魔法玉を返せよ」

「あ、あの、あれは」

「あん?金でも良いぞ?一つ一億な?」

「あれは自衛隊に渡しました」

「なら金だな、五億ちゃんと払おうね」

「あ、あり、ありません、そんなお金」

 ギルマスは黄色い液体を漏らしている。

「ないなら自衛隊にいこうか?返してもらいに!」

「は、はい」

  


 ギルマスの指示で車移動だ。

「おい、ギルマス?ちゃんと向かってるんだろうな?」

「はいぃ!ちゃんと連絡もしてありますので!」

 自衛隊駐屯地に着くと門が開けられ正面の建物の中に案内された。

「やぁ、私は加藤陸曹長だ。君が風間小太郎くんか」

「は?個人情報ダダ漏れだね。あと魔法玉を返してもらいに来た」

「いや、あれは返す返さないのものじゃなくて」

「俺のだからさぁ!こいつが勝手に渡したんだよ?返すのが筋じゃないかな?」

「田辺一曹、持ってこい」

「はっ!」

「持って来させてる間に話をさせてもらえるかな?」

「どうぞ」

 俺はソファーに座って持ってくるのを待つ間に加藤と言う男と話をする。

「あれは大変大事な物だ。だから譲って欲しい」

「無理、こいつが俺に喧嘩売って来てるからもう協力はしない」

「私がそいつをどうにかしよう」

「それでも無理、もう取り返しはつかない」

「どうしてもか?国が動くぞ?」

「それは悪手だね。それを持って来たのは誰だ?」

「そうだね。それではこうしないか?これを自衛隊が買うということで」

「一つ一億」

「なっ!」

「オークションにかけたらどうなるかわかるでしょ?」

「わ、わかった。上と掛け合ってみよう」

「ならいいですよ。で?スクロールもよこせと言っていたようですが?」

 加藤の汗は尋常じゃないくらい流れている。

「いや、あればこちらにも流して欲しいとお願いしただけだ」

「そうですか。スクロールなら売ってもいいですよ?一つ一千万ですけど」

「そ、それも上と掛け合ってみる」


 結局、魔法玉は全て返してもらい、ギルマスはクビになって、俺は普通にダンジョンにはいることを許可された。

「はぁ、俺はこのまま帰りますね」

『転移』

「は?どこに?あぁ。私達は対応を間違えてしまったか」

「そのようですね」

 加藤と田辺はギルマスを摘み出すと、今後の対応をどうするか会議を開く。

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