第59話 日本のギルマス


 ようやく動けるようになるまであれから二か月もかかった。さすがに日本でも心配しているだろうから今日くらいには帰ろうかと思う。

「ルー、今日帰るわ」

「やっと帰るのね。ほんとダメな弟子を持つと苦労するわ」

「悪かったな、ご迷惑おかけしました」

「つぎは無いからね!呪いには注意してよ」

「あ、魔法屋いって探してみるか」

「それがいいわ」

「んじゃ!」

「またね」


 日本に戻ると家が静かだ。

「ただいまー!」

 やはり静かだ。もしかして、

『小太郎へ、沖縄に行ってくるから留守番ヨロ!』

 また自分達だけ遊びに行きやがって!

 まぁ、今回は呪いのこともあったし、良かったのか?


 スマホを見るとメールと電話が溜まっている。メールには楽しそうにしている爺婆ズが、

「いかんいかん、スマホを投げそうになった」

 ん?岡崎ギルドの福田さんやら、三原さんからもメールが来てたな。

『岡崎ギルドの福田です。スクロールのことでお話がありますのでギルドに来た際はよろしくお願いします」

 スクロール?足りないのかな?

「三原です。また時間のある時にダンジョンのことでお話がありますのでよろしくお願いします」

 三原さんはダンジョン関係か。


 まずは岡崎ギルドに転移して福田さんに会う。

「風間小太郎ですが福田さんはいらっしゃいますか?」

「少々お待ちください」

「お待たせしました。こちらへどうぞ」

 応接室に案内される。

「で?どうしたんですか?」

「小太郎様の下さったスクロールですが、厳選した冒険者に使用しました。劇的に剣術が上がったのでそれはそれでよかったのですが」

「何か問題でも?」

「自衛隊のほうからこちらに回せと通達がありまして」

「そんなものもう使ってしまったでいいじゃありませんか」

「そう言ったのですがまだあるだろうと」

「自衛隊も酷いですね」

「また手に入れることは?」

「できますが、自衛隊には渡したくありませんね」

 勝手にちゃちゃいれてくるなんてどこのギルマスだ。

「そうですよねー」

“ガチャ”

「失礼するよ」

「ぎ、ギルマス」

「君が風間小太郎君かね、いますぐ持っているスクロールを渡すんだ」

「は?なぜですか?」

「それは君の手にあって良い者じゃ無い。然るべき人間が管理する」

 あー、なんでこのタイプがギルマスなんかやってるんだ?


「わたすようなスクロールなんてありませんね」

「おい!俺を怒らせるとどうなるか分かってるのか?」

「もう怒ってるじゃないですか?てかどうなるの?」

「こいつはギルドから追放だ。ダンジョンにも入れさせない」

「いいですよ」

「へ?ダンジョンに入れなくなるのだぞ?」

「だから良いって言ってるだろ」

「いや、私が悪かった。スクロールを渡せばいまのことは」

「なかったことにするわけないだろ!」

 俺は部屋を出ようとする。

「待て!こんなことしてタダで済むと思ってるのか?」

「俺の周りに危害を加えたら殺す!」

「ひぃ!」

 俺の殺気でギルマスは白目を剥いて倒れた。


「すいません、すいません」

「いや、福田さんのらせいじゃないですよ」

 泣きながら謝る福田さんに声をかけて、

「また何かあったら連絡して下さい」

 と言ってギルドを出る。

 本当にあの手の人間は嫌いだな。


 次は三原さんに連絡してバーガーショップでら待ち合わせ。

「あ、コタローさん」

「やぁ、三原ちゃん」

 学生さんだから制服が眩しい。

「ダンジョンはどうだい?」

「面白いです。初級ダンジョンなので、最近は手応えがなくなって来ましたけど」

 もうそこまでいってるのか。

「あ、勇者組は怪我して入院しましたよ」

「またなんで?」

「スキルを使って倒すのは良かったんですが、フレンドリーファイヤーで怪我したみたいです」

 自分達で怪我してちゃ世話ないな。

「俺を呼んだってことは中級に行きたいってことか?」

「そうなんです」

「それがさっき岡崎のギルマスと喧嘩してしまってダンジョンに行けないんだよ」

 俺はこれまでのことをかいつまんで話した。

「それはギルマスが酷いですね!」

「だろ?」

「私達はべつに初級で構わないんで、断固として戦って下さい!」

 相変わらず三原さんは正義だな。

「おう!負けはしねぇよ」


 バーガーを食べ世間話をして三原さんとは別れる。


 さて、どうしてくれようか。



 三原さんと別れてからすぐに福田さんから電話があった。

「はい。どうしました?」

「あ、あのですね、ギルマスがまた話をしたいと」

「えー、嫌なんですけど」

「えーと、できればで良いんですがスクロールを売ってもらいたいと言うことでして」

「ふー。なら一旦そっちに行きますね」

 行きたくないが話が進まないので行ってみることに、転移でギルドに行くと。


「さっきはすみませんでした。さぁお話をいたしましょう」

 さっきのギルマスとは違って気持ち悪くなっている。顔に出ていたのか福田さんも苦笑いだ。

「で?スクロールを買いたいと?」

「そうです!ぜひともうちに売っていただきたい」

「じゃあ、一本一千万ですね」

「は?それは高すぎです。一本百万で」

「交渉決裂ですね。それでは」

「ま、まってください、一本五百万で」

「失礼します」

 俺はさっさとギルドから出ていく。

 オークションで一本一千万は絶対するのに百万?なめてるな。


「ギルマス、小太郎様を侮辱しすぎですよ」

「あんな小僧に舐められてたまるか!今度こそ嫌と言うほど辛酸舐めさせてくれよう!」

 まだまだギルマスは諦めてない。


 福田さんからはその三日後に電話があり、またギルマスが会いたいと言って来たらしいが断った。

 それより日焼けした爺婆ズが妙に腹立たしい!

「だから俺も連れてけって言っただろ?」

「お前に合わせてたらいけるとこもいけないんじゃ」

「よし。わかった。こんどユフィと二人で旅行してくる」

「ならん!ならんぞ!それは許せん!」

「お前にユフィちゃんは任せられん!」

「ふざけるな!俺の彼女だぞ」

「だめじゃ!こんどは北海道に行くんじゃから!」

「そっちこそふざけるなよ!俺も北海道いきたいわ!」

「お前の席があると思うな!」

「このくそ爺が!」

 いつもの親子喧嘩だが、なぜおれだけ除け者なんだよ!

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コメントをいただきありがとうございます。

自衛隊を悪く言ってる訳じゃないのですが、そう捉えられてしまう書き方をしてしまってすいませんでした。この後よくなると思いますのでまた呼んでくださるとありがたいと思います。 あに

 

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