第58話 極めし者


 特級ダマルダンジョン 百階層

『主は呪われているぞ』

「知ってるよ。それをいま解呪するための時間稼ぎをしてるとこなんだよ」

『人の子よ、そう簡単に我を倒せると思うてか?』

「やってみないと分かんないかな?」

『主のその傲慢さをわからせてやろう』


 ダマルダンジョンの主、カンナカムイの上に足を乗せ、いま生命を奪おうとしている小太郎にカンナカムイは言う。

『我がしねばこのダンジョンは極となる。それを攻略すればこのダンジョンは消えるであろう』

「そうかい、いいことを教えてもらったよ。ありがとう」

『主が解呪されることを祈っておくぞ』

「あぁ。またどこかでな」


 ドロップ品を拾うと宝箱が出てくる。

「極ダンジョンねぇ。もっと強いんだろうな」

 宝箱を開ける。『革鎧(カンナカムイ)』『蒼鏡の小手』が入っていた。

「おぉ、鎧かぁ。黒くてカッコいいじゃねえか」

 さっそく着替えるとピッタリにサイズが合う。小手も付けてみる。

「うん。良いものが手に入った」

 さて、極ダンジョンは何階層まであるのか、行ってみないとわかんねぇしな。


 小太郎は階層を降りていく。



「あいつは何をやっているんだ」

 あらから二週間が経つ、白の魔女も一回帰ってしまった。

「しまったなぁ、ここに閉じ込めておけばよかった。ダンジョンを渡り歩いているのか?」

 ルーはタバコに火をつけ煙を吹かす。


「ただいま」

「おまえ、遅いって何がどうやってそうなるんだ?」

 小太郎の身体は右腕は捻じ曲がり鎧は辛うじて急所を守る程度、剣はボロボロで杖代わりに使っている。

 すぐに『ヒール』を使い体を癒すがダメージが深すぎて少ししか回復しない。

「とりあえず寝ろ」

『ヒール』を何回も重ねがけしてようやく腕の捻れが元に戻る。それからも『ヒール』をかけ。小太郎が眠るまで続ける。


「はぁ、まさかな」

ルーはメイフィに連絡をとり急ぎ来てもらうことにした。


「これは魂に絡みついてるわね。ちょっと時間がかかるわよ」

「そんなに酷い呪いなのか?」

「呪い自体はそこまでよ。この子がそれに呑まれかけてるから大変なのよ」


 寝ている小太郎には分からないことだが、呪いを解くために掛かった時間は三日。

 それまで白の魔女は一睡もせず飲まず食わずでようやく解呪に成功した。

「メイフィ、ありがとうな」

「これは約束だったし、貸し一つね」

「あぁ、わかった」

 白の魔女はそう言うと自分の家に帰っていく。

「ほんとに心配ばっかりかけて!」


 小太郎の額を叩くとコーヒーを淹れにいく。


「ここはどこだ?」

 身体が思うように動かない。俺は……極ダンジョンを攻略して、ルーの家に戻ってきたまでは覚えているが。

 まだ意識がはっきりしていないようでそれでも体の感覚はあるから生きてはいるんだろう。

「さっさと起きな!」

“バシッ”と頬を叩かれて目が醒めるとルーの部屋だ。

「いてて、身体が上手く動かないんだが」

「そりゃあんな怪我して帰って来たんだ!まだ本調子になるまで時間はかかるよ!」

 やっぱりあれは夢ではなかったのか。

 極ダンジョンでのボスとの最後の死闘は命懸けだったからな。


「コーヒーでいいかい?」

「あぁ、頼む」

 ヨタヨタと歩き机に着くと椅子に腰掛ける。

「何日ねてたんだ?」

「さぁ?一月くらいかね?」

「そんなにか?」

「それで済んでよかったよ」

 一か月も寝てたのかよ。みんな心配……は時間差があるからしてねぇだろうな。


「白の魔女は?」

「あんたを解呪してすぐに帰ったよ。三日もかかったからね」

「そりゃ白の魔女にもお礼を言わなくちゃな」

「それは私がしといたから大丈夫よ。それより、コタローは何をしてきたらあんな怪我になるのよ?」

「極ダンジョンってのを攻略してきた。帝都にあるダマルダンジョンって特級ダンジョンはなくなったけどな」

「は?」

「特級ダンジョンを攻略したらランクアップして極ダンジョンってのになったんだよ」

「分かってるわよ!あんたが極ダンジョンを攻略したことに驚いてるのよ!」


 極ダンジョンは魔女ですら嫌厭するダンジョンらしい。


「あんたいまのレベルはいくつなのよ」


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コタロー・カザマ 十七歳

 時渡人

 レベル379

 力 GS++

 体 GS+

 速 GS++

 魔 GS++

 運 GS-

スキル 五行魔法(火・水・土・風・雷)        

    闇魔法 光魔法 聖魔法 回復魔法 転移魔法 時空間魔法 鑑定魔法 強化魔法 支援魔法 付与魔術 錬金術

    剣術 槍術 棍術 体術 盾術 感知 天歩 剛断 瞬歩

ユニーク 限界突破


 黒の魔女の弟子

 巻き込まれし者

 極めし者

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんて馬鹿のようなステータスなの」

 馬鹿って言われても呪われてたんだし。

「凄いなぁ、俺って強くなったな」

「いまなら赤の魔女に勝てるんじゃない?」

「いや、そんなことするわけないだろ?」


 つか、極めし者ってなんだよ。

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