第49話 マリア


 結局ウェアウルフの毛皮もマリアが買い取ると言い出して、二匹分わたす。 

「では、総額で三百七十二万円になります。カードでよろしいでしょうか?」

「お願いします」

 最近金銭感覚がバグってきてるな。会社勤めのころは一万でも大金だったのに。


「じゃあ次は私の番ね」

「ん?まだいたのか」

「し、失礼ね!いたわよ」

 女騎士マリアか。くっころされそうな名前だな。

「変な事考えてないでしょうね?」

「考えてません」


「じゃあ取引と行きましょう。レッドミノタウロスの皮が五十万、ウェアウルフの毛皮が二匹分で五十万、普通のミノタウロスのドロップが三十万でいいわね?カードに入れとくわよ」

 なぜか爺やのような人が来ていて俺のカードに入金しているようだ。

「高くねぇか?もっと安くていいぞ?」

「いいの!助けてもらったお礼も兼ねてるんだから」

「うーっす」

「くぅー!小太郎の上の名前は?」

「風真、風間小太郎だ」

「私はマリア・北条!覚えたわね!」

「だから覚えたって」

 このお嬢様は話を聞かないなぁ……そう言えばあっちのお嬢様は今頃頑張ってんのかな?


「じゃあ何かあったら連絡するからね」

「は?」

「じゃあね」

 まさか調べてくるとかないよな?

「まぁ、そうなったらしょうがないか」

 その時はその時だな。


 その時俺のスマホが鳴る。

 まさかと思ったら福田さんだった。

「はい」

『あ、福田です。この間はどうもありがとうございました』

「いえいえ、どうしました?」

『あのスクロールの使い方がよく分からなくて』

「あぁ。じゃあ今から行きます」


 俺は転移で岡崎ギルドに入る。

「だれに使ってもらうんですか?」

「あ、あれ?いついらしたんですか?」

「たったいまですよ。ついでに寄っただけですから」

 福田さんはスマホを持ったまま呆気に取られている。

「で?どうなんですか?」

「あ、あのまずは私が使ってみることになりまして」

「あぁ、魔力がわからないんですよね?」

「そうなんです。スクロールに魔力を馴染ませるとのことだったんですが」

「なら背中を触らせてもらっていいですか?手を置くだけなんで」

「あ、はい」

 後ろを向く福田さんの背中に手を置くと魔力を流す。

「これ感じられますか?」

「あ、あぁ、わかります!これが魔力なんですね!」

「じゃあこのままスクロールを開いてください」

 福田さんは言われた通りにスクロールを開くとそのまま馴染ませる。

 俺は途中から手を離している。

「あ、覚えました!剣術!」

「おめでとうございます。魔力も分かるようになりました?」

「はい!まだ私の中でグルグル回ってるのを感じます」

 ならこのままで大丈夫そうだな。


「なんなら初級ダンジョンでレベルを上げてみてはどうですか?」

「私がですか?」

「そうですね、豊川ダンジョンに行きましょう」


 転移で豊川ダンジョンに行くとダンジョンに入って行く。

 終始“えっ!えっ?”と福田さんは言っていたがそのまま連れて行く。

「そこです、斬って下さい」

「はいぃ!」

「お見事」


 一階層目のスライムから二階層目のゴブリンも倒し、鑑定でみたらレベルが三に上がっていたのでこれで帰ることにする。

「お疲れ様でした」

「はい。あのありがとうございます」

「では岡崎ギルドに帰ります」


 転移で岡崎ギルドに帰ると福田さんはまたお礼を言って職場に帰って行った。


 レベル三なら魔力は使えるから俺と同じようにできるだろ。


 実家にら帰ると笑い声が響いてる。また爺婆ズが家にいるのだろう。

「ただいまぁー!」

「「「「おかえりー」」」」

 あぁ、これはやっぱりいいもんだな。

「小太郎お土産はないのか?」

「土産土産!」

「俺の感動を返せ!この爺婆ズが!」

 人の顔見るなりお土産をせびりやがって。


「なんじゃ、ひよこか」

「んじゃ食うな」

「うっそぴょーん」

「可愛くねぇよ」

 婆ちゃんはお茶を淹れ、爺ちゃん達はひよこに群がる。

 つうか若返ってないか?

「親父は足の痛みは?」

「お前のくれた薬で治った」

「ささ婆も腰は?」

「薬で治った」

 なんだポーション使ったのか。って、予備のポーションは?使い切ってるし。追加しとくか。


「お前の薬はよく効くなぁ」

「あれはポーションってんだよ。高級品だぞ?」

「いくら高級でもつかわな損だろ」

「まぁな。んで?今日の飯は?」

「ピザ頼んだ」

「は?」

「ピザ頼んだ」

「二回言うなよ。どこの爺婆ズがピザ頼むんだよ」

「わしらじゃー!」

 元気なのはいいことだが元気すぎるのも考えもんだな。

「私が食べたいって言ったの」

「ユフィが?ならしょうがないか」

「「「「ぶーぶー」」」」

「ブーイングすな!」


「で?どうなの?日本のダンジョンは?」

 真剣な顔でユフィが聞いてくる。

「ぜーんぜん大したことない。ちょっとおかしなことがあったけど別に大したことなかったしな」

「そうなんだね。それなら良かった」

 俺の心配をしてくれているんだな。

「こいつは大丈夫大丈夫!」

「んだ!小太郎は小心者だからな!」

「危ないとこには行かないべ」

「うっせぇーよ!」

 ほんと爺婆ズは!!


「でも感謝しとるんじゃ」

「わしもそうじゃ」

「こんな年寄りにも優しい子に育ってくれて」

「おいおい、なに辛気臭いこといいだしてんだよ」

「いや、いまだから言っておかないといけないんじゃ!」

「親父……」


「ピザーロでーす」

「お勘定よろしくな!小太郎!」

「……てめぇらの血は何色だぁ!」

 もう騙されねぇぞ!くそったれ!


「お父さん達は本当にコタローのことが好きだね」

「馬鹿にしてるだけだろ?」

「ううん。私にすっごく自慢するの」

「俺のことを?」

「優しくていい子だとか、自慢の息子だって」

 けっ!聞かなかったことにしよう。

「分かった分かった、この話はこれで終わり」


「照れてる」


「うっさい」

 布団で顔を隠すとおでこにキスをされた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る