第48話 ミノタウロス


「ん、んじゃいってくる」

「お、おう、いってらっしゃい」

 ギクシャクとした会話だが、これでもしゃべれてる方だ。

 朝なんて口も聞けなかったからな。


 前の家に転移して、今度は吉祥寺のダンジョンを攻略するか。

 事前に調べたところ吉祥寺にはアトレダンジョンがあるらしく、そこは上級らしい。

「アトレがダンジョンになるとはなぁ」

 中に入ってカードをかざしてダンジョン内に入って行く。


「最初からミノタウロス?ここやばいんじゃないか?」

 ダンジョンブレイクまっしぐらじゃないのか?

 とりあえず斬って斬って斬りまくる。そしてたまに魔法でバーン!!

 って、俺だけしか入ってないよな?

「誰かいたら返事しろよー」

 ミノタウロスの群れの中にいたらまぁ、死んでるけどな。

 一階層をあらかた片付けて二階層に行く途中で、

「たしゅけて……」

 階段から声が聞こえて向かうと甲冑をきた女の子がいた。

「ん?一階層は片付けたから帰れるぞ」

「こ、腰が抜けて」

 こんな立派な格好してるのに?

「はぁ、しょうがねぇな」

 担いで来た道を戻る。

「も、もっとマシな持ち方してよ」

「これが楽だから」

 ギャーギャーうるさいが、無視して出口まで連れて行く。

「ほれ、出口だぞ」

「乱暴だったけど、あ、ありがとう。貴方の名前は?」

「ん?小太郎だけど」

「私はマリア。マリア・「んじゃいくからな!」待てーい!」

「なんだよ。マリアだろ?覚えたよ」

「ちゃんと名乗ろうとしたのに貴方がぶった斬るからよ」

「マリアでいいだろ?んじゃいくからな!」

 女騎士のような格好のマリアはまたギャーギャー言ってたけど出口まで送ったんだからいいだろ!

「にしても二階層もミノタウロスかよ」

 べつに変異種とかじゃなく通常のミノタウロス。

 三階層、四階層も同じだ。

 ミノタウロスダンジョン?なわけないか。


 十階層までミノタウロスだった。ドロップ品はミノタウロスの皮と角でいっぱいだよ。

「ここになんかいるのか?」

『ブモオォォォォ』

 またミノタウロスだが、色が違うなレッドミノタウロスってとこか。

 突進をかましてくるレッドミノタウロスの角を掴んで勢いよく捻り殺す。

「はぁ、ミノタウロスじゃこんなもんだな」

 ボスのレッドミノタウロスはドロップ品になって消えてしまった。


 このまま下の階層にいくか?ってまぁ、行くしかないか。

 十一階層はミノタウロスじゃなくなっていた。ふつうにウェアウルフが闊歩している。

 一階層から十階層までがおかしかった訳か。


 その後二十階層までいって問題ないことを確認してから戻る。

「まってたわよ、小太郎!」

「ん?マリアは暇なのか?」

「ちがーう!ちゃんとお礼をしないなんて北条家の名が廃るのよ!」

「なんだ、いいとこのお嬢かよ」

「なによその言い方!」

「俺はただの一般人だから!それじゃあ!」

 俺はなんだ?なんか呪われてんのか?

「ちょっと待ちなさいよ!」

「俺は今から換金しに行くとこなんだよ」

「じゃあ私もついて行くわよ」

「なんでだよ!あーもー勝手にしろ」

 俺は買い取り所まで行って、受付をする。


「なんの買い取りなのよ?」

「あ?ミノタウロスのドロップだけど?」

「なら私に売りなさい!高く買い取ってあげる」

「いや、別にいいや」

「売ってよー!ミノタウロスのドロップ品を取りに来たんだから!」

 めんどくさいから皮と角を渡す。

「やるから静かにな」

「えっ!いいの?」


「お待たせしました。では倉庫の方でドロップ品を出してもらえますか?」

 大量だと先に言っていたので倉庫の方を用意してもらった。

「まずはミノタウロスのドロップ品から」

 ドサドサとミノタウロスの皮を置いて行くと、受付のお姉さんが引いている。

 次に角を同じ量だけ出して行く。

 レアドロップで戦斧がでたけどそれも出すと、ストップがかかった。

「これはお一人で?」

「そうです。それからこれが十階層のボスドロップですね」

 赤いミノタウロスの皮を出す。


「あーーー!それ、それ売ってよ!」

「なんでだよ?それやっただろ?」

「そっちの方がいいー!」

「はぁ。んじゃこれもやるよ」

「やったー!ちゃんと買うからね」

「はいはい」

 こいつはいつまでついてきてんだか。




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