第50話 デート


 今日は爺婆ズに断りを入れて、二人でデートだ。

「二人なんて久しぶりだな」

「口調が変わってるぞ?」

「二人だからな!」

 久しぶりの元気なユフィだ。

 オシャレをしてるし、化粧も少しだけしてるみたいだ。

「えへへ」

 腕を絡ませて歩く。ちょっと歩きづらいけどな。

「何食べたい?」

「ハンバーガー!」

「マジかよ」

「だって懐かしいだろ?」

 そう言えば最初はハンバーガーを食べさせたんだっけ。

「んじゃ、ハンバーガー食べに行くか」


 人気のバーガーショップはいつでも並んでるが、今日はやけに学生が多いな。

「並んでるねぇ」

「テスト明けかな?」

 そんなことを考えていると足元が光る。

「うおっ!なんだこれ!」

「きゃーー」



 俺たちは気付いたら大きな大理石の様な石でできた神殿にいた。全員で三十名くらいだろうか。

「よく来た勇者諸君よ」

「は?」

 ざわざわと皆が喋っている、ラノベだの召喚だのと騒いでいる奴らもいる。

「静まれぃ!これからお前達には勇者として魔王と戦ってもらう。まずは鑑定の儀を行うので、そちらに並ぶがいい」

 偉そうな男が言いたいことだけ言って大勢の騎士達が俺たちを取り囲む。

「ユフィ、しゃがめ」

「転移」

 俺たち二人は転移で少し離れた柱の後ろに隠れた。


「おおっ!大谷裕司は勇者と出た」

 周りから歓声が湧き起こる。

「三原静音は聖女、神崎健は賢者」

 周りは歓声ばかりでほかのひとのが中々聞こえない。

 全員が鑑定されるとみんな移動させられて行く。

「まずはここがどこなのかしらなきゃな」

「ルナディアだよ?」

「え?あぁ。言葉がそうだったな!だとしたら聖教国か!」

「たぶんそう」

 聖教国は赤の魔女、魔王と戦争を繰り返しているヤバい国だ。

「ルーのところに行く」

「コタローの師匠?」

「そうだ。転移」


「ルー、いるかぁ?」

「あいてるよー」

 中に入るとガウンを着たルーが手を挙げる。

「久しぶりね」

「あぁ、日本にいたからな。で、こっちが彼女のユフィだ」

「こ、こんにちわ」

「はい、こんにちは」

 ルーは優しい笑顔で迎えてくれた。


「で、聖教国が勇者召喚をしたって?」

「そうなんだよ、俺たちも巻き込まれたけど、転移で逃げてきた」

「はあ、あの国も懲りないねぇ」

「ん?どう言う意味だ?」

「勇者召喚は百年に一度くらいで行ってるみたいでさ、でも勝ったことがないんだよ」

「勝ったことがない?」

「そりゃそうさ、もし勝ってたら赤の魔女はもういないことになるからねぇ」

 赤の魔女を倒すために勇者召喚してるけど勝ったことがないなら。

「その勇者達は?」

「みんな死んでるねぇ」

 はぁ、なんてことだよ。馬鹿げてるじゃないか。


「聖教国はバカの集まりなのか?」

「さぁ?今度こそはとか思ってるんじゃない?」

「呼ばれたのは学生ばかりだったぞ」

「私にはわからないわ。聖教国がやってることだもの」

 全員いっぺんに転移は出来ないから少しずつ転移で日本に帰すか。

「日本に帰りたい人だけじゃないと思うわよ」

「突然拉致されたら帰りたいのが普通だろ?」

「勇者だ聖女だと持て囃されて、この国の為になんて踊らされる人間もいるんじゃない?」


 あぁ、たしかに“やったー”とか叫んでるやつもいたな。でも勝てなくて死ぬと分かってるのに何にもしないわけにはいかない。


「あと、赤の魔女は勇者との戦いを好むわよ?邪魔されるとタダじゃ済まないかも」

「どう言うことだ?」

「コタローがその人達を助けるなら、赤の魔女を敵に回すって話よ」


 ならどうしろって言うんだよ!


「そう言えば貴方達も召喚されたなら何かスキルがついてるんじゃない?」

「ん?どう言うこと?」

「召喚されたものは何かしら恩恵があるらしいの、だから勇者とか言われるのよ」

「あぁ。確認してみる」


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コタロー・カザマ 十七歳

 時渡人

 レベル112

 力 LS++

 体 LS+

 速 LS+

 魔 LS++

 運 LS+

スキル 五行魔法(火・水・土・風・雷)        

    闇魔法 光魔法 聖魔法 回復魔法 転移魔法 時空間魔法 鑑定魔法 強化魔法 支援魔法 付与魔術 錬金術

    剣術 槍術 棍術 体術 盾術 感知 天歩 剛断 瞬歩

ユニーク 限界突破


 黒の魔女の弟子

 巻き込まれし者

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ユフィ 十五歳

 天弓士

 レベル55

 力 B-

 体 B-

 速 B+

 魔 C+

 運 C-

スキル 風魔法 土魔法 火魔法

    弓術 短剣術

    早駆け 剛弓 曲射 三連射

ユニーク 天弓召喚


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 おお。限界突破だ。ユフィは天弓召喚か、それにしても時渡人も天弓士も意味わからんな。

「限界突破がついてたよ。ユフィは天弓召喚」

「天弓召喚!」

「もうやるのかよ!」

「うぉ!弓がカッコ良い!」

 ユフィの手にはかっこいい弓が現れた。

「二人ともユニークスキルが手に入ったんだねぇ」

 ルーはニコニコしている。

「が、勇者の話が終わってない」

「帰りたい人だけじゃダメなの?」

 ユフィの言う通りでいいとは思うけど、わざわざ死ぬのに行かせるわけにいかんでしょ。

「赤の魔女は絶対怒る?」

「怒るねぇ。勇者だと特に楽しみにしてたから」

「マジかよ。それじゃあどうしようもないじゃん」

「聖教国に責任とってもらうとか?」

「それだ!」

「あいつらまた勇者召喚するだけだよ」

「儀式できない様にぶっ壊す」

「あー、それならいけるか」

 ルーは考えている様だが赤の魔女が気にかかる様だ。

「赤の魔女のことだから最悪はコタローのことを狙うわね」

「うわぁ、それは勘弁して欲しいな」

  

 

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