第34話 旅路


「アイーザダンジョン攻略おめっとさん」

「もっとテンション上げてお祝いしてくれよ」

 ユフィがアイーザダンジョンを攻略したのだ。中級とは言えこのスピードで攻略する人間がどれだけいるのかは分からないが早い方だと思う。

「いや、まじで攻略したな」

「最後なんてまじで苦戦して死ぬかと思ったよ」

 最終階層はリザードエンペラーだったか。

 放置してるとドンドン仲間を召喚するやなやつだったのを覚えてる。

「これでやっと上級に挑めるよ!コタローも一緒に攻略するだろ?」

「いまさら上級か、まぁいいだろ」

「よっし!私の力を見せつけてやるぜ」

「まぁ保護者的な役割だな」

 近場に上級ダンジョンはないから帝都にいくつもりだし、旅支度もしなきゃならん。

 ギルドで護衛の依頼があればいいが、なかったら二人旅だな。


「たこ焼き出してくれヨォ!たこ焼きぃ」

「酔いすぎだ!こんなとこで出せるわけないだろ」

「えぇー。あの丸くてホワホワ柔らかいそして熱いたこ焼きが食べたいのにぃー」

「部屋帰ってからな!本当にこの酔っ払いは」

 弱いのに酒なんか飲むからだ、いくら十五歳から飲めるって言っても身体にいいわけない。しかもここのエールはそこまで上手くないから何が入ってるか分かったもんじゃない。

「おら、部屋に行くぞ」

「まぁ、まてや坊主。そっちの女は置いて行け」

 またロリコンゴリラがやってきたか。

「いや、結構です」

「お前はいらないって言ってるだろ?」

「はぁ、死ぬ覚悟があればかかってこい!」

 俺は殺気を放つとロリコンゴリラは泡を拭いて倒れた。

「んとに、これくらいで倒れるなら寄って来るなっての!」

「あ。自分普通に歩けるであります」

 ユフィが自分で立って歩いていく。殺気にあてられたらしい。

「馬鹿弟子が」


 次の日、ギルドでは護衛依頼が無かったため歩きで帝都に向かう。やはり一月ほどかかるようだ。

「こんな風に歩いていくのも、のどかでいいですねぇ」

「まぁな。街道を通って行けば宿場町もあるし、余計なモンスターも会う確率は少ないだろう。その代わり盗賊なんかには気をつけろよ?」

 二人旅だから夜番は一人で見張らなければいけない。だから出来るだけ宿場町で休みたいものだ。

「盗賊くらいチョチョイのチョイだぜ」

 ユフィが張り切っているが、これから長いんだ。そのうち疲れも出て来るだろう。

「あまり最初から張り切りすぎるなよ?」

「了解っす」

 馬車に追い越されながら道を歩いていく。

 途中休憩を取りながら次の宿場町にようやく着いた頃には日が暮れる直前だった。


「宿が空いていてよかった」

「お客さんもギリギリで入ってきたからちゃんとしたものは出来ないよ?」

「携帯食があるから大丈夫だ」

「その分まけてね!」

「あはは、そりゃ負けさせてもらいますよ」


 今日はカツ丼で晩飯を済ませ、部屋はツインだからユフィと一緒だ。

「変なことするなよ?」 

「お前がな!」

 年頃の男女をツインに押し込めるとは、ここの女将も配慮が足りないな。と言うか怪しすぎる。ここしか空いてないと言うが、他の部屋から気配を感じない。


 夜中、人の足音で目を覚ます。ユフィも起きたようだ。ゆっくりと鍵が開けられるのを待ってから入ってきたやつらを捕える。

「宿屋がこんなことしていいのか?」

「勘弁してくれ!こんなことでもしなきゃ食って行けないんだ」

「嘘つくならもっとマシな嘘を吐くんだな」

 縛られた女将と男達を村の憲兵に差し出したところで変わらないだろ。

「まずは一人」

 俺は躊躇なく首を刎ねる。

「ひ、ヒイィィィ」

「か、勘弁してくれ!もう悪さはしねぇ」

「ほ、本当だよ!」

「二人目」

 五人中二人目の首を刎ねる。

「ひあぁぁあ」

 三人は気を失った。


 翌朝憲兵に差し出したが、何も言わずに連れられて行った。やはりそう言うことなのだ。だがあの三人はもう死ぬ覚悟ができなければこんなことには手を染められないはずだ。

「見逃して良かったのか?」

「まぁ皆殺しはしてもしょうがないからな」

 これで村がすこしでも良くなればいいと思うが、上手くはいかないだろう。


「さぁ、つぎの宿場町まであるくぞ」

「おおー!」

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